団体交渉とは?
団体交渉とは、労働組合と会社(使用者)との間で労働条件や集団的労使関係のルールについて交渉することをいいます。
団体交渉では、主に、ア)組合員である労働者の労働条件その他の待遇やイ)団体的労使関係の運営に関する事項(団体交渉や争議行為の際の手続、組合事務所や掲示板の貸与、チェックオフ等の便宜供与、組合活動のルール)であって、ウ)会社が処分可能なものを話し合います(義務的団交事項)。
義務的団交事項の具体例
・賃金(賃金制度、賞与・退職金制度)
・労働時間制度
・安全衛生・労災補償
・人事制度(昇格・昇進、能力開発制度、配転・出向・転籍・休職、懲戒、解雇に関する基準・要件・手続等)
ユニオン等の労働組合とは?
労働組合とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」をいいます(労働組合法2条本文)。
労働組合法では、労働者は自由に労働組合を設立できるとされており(自由設立主義)、労働組合の結成に許可や届出は不要になります。
また、労働者は、自由に労働組合に加入することができるとされており、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイト等でも労働組合を結成したり、加入したりすることができます。
労働組合には、様々な形態があり、ユニオン・労働組合への対応を行う際には、労働組合の性質や性格を把握しておく必要があります。
労働組合の形態
A.職業別組合
B.産業別組合
C.一般労組
D.企業別組合
E.地域労組(合同労組)
労働組合は、労働組合法において、特別な法的保護が認められており、労働組合法上の「労働組合」であれば、①不当労働行為に対する救済制度(労働組合法7条)や②労働協約制度(労働組合法14~18条)が認められます。
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団体交渉を拒否した場合の問題点とは?
ユニオン・労働組合との団体交渉を拒否する場合(団体交渉拒否)、労働組合法7条2号が規定する不当労働行為(使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと)と判断されます。
この団体交渉拒否は、団体交渉に応じないだけでなく、誠実に交渉しないことも含みます(不誠実交渉)。
会社側が団体交渉を拒否する場合、労働組合は、労働委員会に対して救済申立てを行うことができます(労働組合法27条)。
労働委員会は、労働組合による救済申立てを審査し、不当労働行為であると判断する場合、会社に対して、団体交渉応諾命令を発令したり、団体交渉を拒否してはならないという命令を発令します。
また、会社側が不当労働行為として団体交渉を拒否する場合、労働組合側から会社側に対して損害賠償を請求されることもあります。
日本では、労働組合による団体交渉は、団体交渉権として憲法上保障されており(憲法28条)、労働組合法では不当労働行為として禁止されているため、安易に労働組合による団体交渉を拒否することは得策とはいえません。
また、労働組合を過度におびえる必要もなく、労働組合との団体交渉によって、労働問題や労働トラブルを解決することができることもあります。
労働組合との団体交渉を放置したり、無視したりすると、労働審判や労働裁判等に発展することもあり、かえって会社側が過大な負担を強いられることもあるので、注意する必要があります。
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「ユニオン・労働組合」との団体交渉の注意点・リスク
①団体交渉を拒否しない。
労働組合との団体交渉を拒否すると、労働組合法が禁止する不当労働行為と認定されることになるため、基本的には、団体交渉を拒否することは得策ではありません。
労働組合に加入する従業員の中には、問題社員(モンスター社員)であったり、法的に理由・根拠がない主張を繰り返す従業員もいますが、団体交渉には原則として応じる必要があります。
また、団体交渉に応じることによって、労働問題・労働トラブルを解決できることもあるため、過度にユニオン・労働組合や団体交渉に怯える必要はありません。
②労働組合に対して不快感を示す発言や忌み嫌う発言をしない。
労働組合から団体交渉を要求されると、会社として重い負担が発生し、肯定的に捉えることができないことは当然です。
そのため、労働組合に対して不快感を示す発言や忌み嫌う発言をしてしまう経営者の方もおられます。また、労働組合の存在自体を否定しようとする発言をしてしまうこともあるかもしれません。
もっとも、このような発言を行ってしまうと、労働組合との間で感情的なもつれとなり、解決が長引いてしまうこともあります。
また、労働裁判となった場合、労働組合に加入したことや結成したことを理由に不利益な取り扱いをしたと主張され、会社側の主張が認められないリスクがあります。
さらに、労働組合法でも、労働者が労働組合に加入したことを理由とする解雇その他不利益な取り扱いを禁止しているため、不当労働行為として問題となるおそれがあります(労働組合法7条1号)。
そのため、労働組合に対して不快感を示す発言や忌み嫌う発言をしないように注意する必要があります。
労働組合法7条(不当労働行為)1号
労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
③労働組合の要求事項を十分に検討せずに応諾すること
労働組合の要求事項を十分に検討せず、応諾することには注意する必要があります。もし労働組合の要求事項に安易に応じてしまうと、次々と要求事項が追加され、会社に過度な負担が発生するリスクがあります。
労働組合との団体交渉には誠実に対応することは望ましいと言えますが、労働組合の要求事項に応じるかどうかは、全体的な戦略や方針を整理したうえで、決定する必要があります。安易に労働組合の要求事項に応じないように注意する必要があります。
④会社だけで対応が難しい場合、弁護士への依頼を検討すること
労働組合との団体交渉では、事前の準備が必要であり、また、団体交渉の方針・戦略を決定する必要があります。
もっとも、ほとんどの経営者や人事担当者の方は、労働組合対応の経験がないことは当然ですし、労働組合に対応できる人材をすぐに確保することは難しいといえます。
また、人事担当者にとっても、労働組合との団体交渉を一人で担当することは、過度な負担が発生してしまい、生産性を低下させ、最悪の場合、離職につながることもあります。
そのため、会社だけで対応が難しい場合、弁護士への依頼を検討することをおすすめしています。
また、最初は会社だけで労働組合対応を行っていたが、深刻な紛争・トラブルに発生してしまった後に弁護士に依頼すると、労力や費用負担が余計に過大となってしまうことがあります。
そのため、会社だけで対応が難しいと判断する場合、早期に弁護士への依頼も検討してください。
弁護士による団体交渉対応
多くの会社経営者や役員の方にとって、団体交渉の経験がないことが通常であり、また、団体交渉の準備・参加について、心理的にも物理的にも過度な負担がかかります。
そのため、紛争・訴訟や労働法に精通する弁護士に団体交渉対応を依頼することによって、経営者の皆様の負担を軽減し、団体交渉を有利に進め、労働問題の適切な解決を目指すことができます。
労働問題を深刻化させないためにも、団体交渉申入書を受け取ったら、早めに労働法の専門家である弁護士に相談することを検討ください。
弁護士によるサポート内容
①労働組合との窓口対応
②団体交渉申入書に対する回答書の作成
③団体交渉への立会・参加
④団体交渉の準備・資料作成サポート
⑤和解書(合意書)の作成
⑥団体交渉に向けたアドバイス
⑦不当労働行為の対応
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弁護士に団体交渉対応を依頼するメリット
弁護士に団体交渉対応を依頼するメリットは、以下のとおりです。
①団体交渉で準備すべき事項を整理し、団体交渉や労働問題・トラブルを解決するためのアドバイス・助言を得ることができます。
②団体交渉で作成すべき資料・書類(回答書、説明書、労使協定書)を会社に代わって作成してもらうことができ、経営者や人事担当者の負担軽減につながります。
③労働組合との窓口を弁護士に依頼することができ、担当者の負担を軽減し、団体交渉の日時・場所・参加者の調整を円滑に進めることができます。
④弁護士が団体交渉へ立会・参加することによって、法的な根拠に基づく冷静な話し合いによって団体交渉を進めることができます。
⑤労働組合から法的に理由のない要求等がされた場合でも、弁護士が説得し、団体交渉における着地点を見出すことができます。
団体交渉・団体交渉申入書については弁護士にご相談ください
弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。
顧問契約では、問題社員対応、未払い賃金対応、ハラスメント対応、団体交渉・労働組合対応、労働紛争(解雇、残業代、ハラスメント等)等の労働問題対応を行います。
団体交渉、労働組合対応について弁護士が解説
Last Updated on 2024年2月15日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔 この記事の監修者 弁護士法人かける法律事務所 弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添い、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、日々挑戦し、具体的かつ実践的な解決プランを提案することで、お客様から選ばれるリーガルサービスを提供し、お客様の持続可能な成長に向けて貢献します。 私は、日本で最も歴史のある渉外法律事務所(東京)で企業法務(紛争・訴訟、人事・労務、インターネット問題、著作権・商標権、パテントプール、独占禁止法・下請法、M&A、コンプライアンス)を中心に、弁護士として多様な経験を積んできました。その後、地元・関西に戻り、関西の企業をサポートすることによって、活気が満ち溢れる社会を作っていきたいという思いから、2016年、かける法律事務所(大阪・北浜)を設立しました。弁護士として15年の経験を踏まえ、また、かける法律事務所も6年目を迎え、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、関西の企業・経営者の立場に立って、社会の変化に対応し、お客様に価値のあるリーガルサービスの提供を目指します。
代表弁護士 細井大輔
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