企業におけるハラスメント対応とは?
弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添いながら、法律の専門家として最善の解決を目指し、経営者の皆様が経営に専念できるようにサポートします。
「ハラスメントを繰り返す社員がいるが、対応方法がわからない」
「ある社員からハラスメント被害の申告があった」
「ハラスメント対策として会社として何をしていいかわからない」
1 メンタルヘルスとハラスメント
現代のトレンドに「人的資本経営」という言葉があります。「人的資本経営」とは人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方をいいます。
この「人的資本経営」を実現するためにも、企業で働く人々のメンタルヘルス(心の健康)・ハラスメントへの対応は、従業員個人の問題だけでなく、企業として重要な課題となっています。
つまり、企業は、中長期的な企業価値を向上させるために、従業員一人ひとりのメンタルヘルスの保持増進を確保し、各人が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整備することが大切になります。
メンタルヘルスを阻害する要因(ハラスメント)として、代表的なものとして、以下が挙げられます。
・パワーハラスメント(パワハラ)
・セクシュアルハラスメント(セクハラ)
・カスタマーハラスメント(カスハラ)
各ハラスメントは、従業員に精神的な苦痛を与え、その苦痛が積み重なると、過大なストレスを蓄積し、従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。
*ハラスメントは、正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用するすべての労働者との関係で問題になり得ます。また、派遣労働者について、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者 (派遣先事業主)も対策を行わなければなりません。
2 ハラスメントの類型
①パワーハラスメント(パワハラ)
厚生労働省によれば、職場におけるパワーハラスメントは、A)職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、B)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 C) 従業員の就業環境が害されるものをいいます。
もちろん、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる業務指示や指導について、パワハラには該当しません。ただ、その判断が難しかったり、悩んだりするケースが多くあります。
特に、パワハラをしている人は、自分の優位性を認識しないまま、相手方に対し発言等してしまうため、パワハラと認識しないまま、その言動を行ってしまうケースもあり、問題は複雑です。
パワハラの具体例:
- 精神的な攻撃:同僚の目の前で叱責される。
- 身体的な攻撃:叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける。
- 過大な要求:新人で仕事のやり方もわからないのに他の人の仕事までおしつけられ、同僚は、皆先に帰ってしまった。
2019年に改正された労働施策総合推進法30条の2は、職場におけるパワーハラスメ ントについて事業主に防止措置を講じることを義務づけています。また、そこでは、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されています。パワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置義務は、中小事業主においても2022年4月1日から義務化されました。
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②セクシュアルハラスメント(セクハラ)
職場におけるセクシュアルハラスメントとは、職場において行われる従業員の意に反する性的な言動に対する従業員の対応により、その従業員が労働条件につき不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることをいいます。
ここでは、異性に対するもののみならず、同性に対するものも含まれ、相手の性的思考や性自認にかかわらず、その対象となります。また、セクシュアルハラスメントの行為者には、企業の事業主、上司、同僚に限られず、取引先や顧客によるものも含まれます。
職場におけるセクシュアルハラスメントには大きく分けて「対価型」と「環境型」の2種類があります。
「対価型」:従業員の意に反する性的な言動に対する従業員の対応(拒否や抵抗)により、その従業員が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けること
「環境型」:従業員の意に反する性的な言動により従業員の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその従業員が就業する上で看過できない程度の支障が生じること
セクハラの具体例:
- 事務所内において事業主が従業員に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その従業員を解雇すること。
- 出張中の車中において上司が従業員の腰、胸などに触ったが、抵抗されたため、その従業員について不利益な配置転換をすること。
- 事務所内において上司が従業員の腰、胸などに度々触ったため、その従業員が苦痛に感じ てその就業意欲が低下していること。
職場におけるセクシュアルハラスメントに関しては、社会的認知や理解は少しずつ浸透しているものの、まだまだ問題・過大が多いといえます。厚生労働省によれば、都道府県労働局雇用均等室に寄せられる男女雇用機会均等法に関する相談の約半数が職場におけるセクシュアルハラスメントということです。
現時点において、セクシュアルハラスメントの相談がないからといって、社内でセクシュアルハラスメントが起きていないとは限りません。相談できる環境・窓口がないという声も聞かれます。
男女雇用機会均等法第11条では、職場におけるセクシュアルハラスメントについて、事業主に防 止措置を講じることを義務付けています。
企業は、職場におけるセクシュアルハラスメントが発生しないように、また、万が一、発生したときでも、適切な時期・方法で対応することが求められます。
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③カスタマーハラスメント(カスハラ)
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、従業員の就業環境が害されるものをいいます。
カスタマーハラスメントに直面した従業員は、その内容が個人の人格否定や尊厳を侵害するようなものであった場合、その言動により精神的苦痛を受けてしまいます。
そうすると、その従業員は、業務のパフォーマンスの低下や健康不良や現場対応への恐怖、苦痛による従業員の配置転換、休職、退職などにつながりかねません。
また、企業への影響としては、時間の浪費(クレームへの現場での対応、電話対応、謝罪訪問、社内での対応方法の検討等)、人員確保(従業員離職に伴う従業員の新規採用、教育コスト等)があります。
カスタマーハラスメントの具体例:
- 身体的な攻撃(暴行、傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
- 土下座の要求
カスタマーハラスメントも従業員がメンタルヘルスに支障をきたす重要な要因であるため、企業側としては、従業員に対するカスタマーハラスメントに対する適切な対応策が求められます。
特に、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2第3項に基づき厚生労働省が告示している「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」においては、事業主は顧客等からの著しい迷惑行為によって雇用する従業員の就業環境が害されないよう、相談対応体制や被害者への配慮のための取組を行うことが望ましく、また、被害防止のための取組を行うことが有効であると定められています。
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3 ハラスメント対策が必要な理由
①損害賠償リスク
従業員が職場内におけるハラスメントが原因でうつ病等のメンタルヘルスの問題が生じると、その問題を生じさせた加害者のみならず、安全配慮義務違反や使用者責任として企業にも損害賠償等の法的責任が発生するリスクがあります。
特にハラスメントを原因として、うつ病等を発症し、最悪の事態(自殺等)に陥る場合、損害賠償金額は極めて高額となり、事業継続に重大な影響を及ぼします。
②人材の採用や定着
ハラスメント問題を放置してしまうと、ハラスメントを受けている従業員は、継続的・累積的にストレスを感じ、メンタルヘルスを害してしまいます。
そうなると、業務に対するモチベーションや集中力が低下し、離職する可能性が高まります。
そうすると、他の従業員のモチベーションの低下につながり、生産性も低下してしまいます。労働人口の減少に伴い、様々な業界で人材不足が問題となる現代社会において、特に人材の採用や定着の観点から企業価値を向上させるためにも、企業としてハラスメント問題に適切に対応することが求められます。
③社内外の信用確保
近年、企業には、企業活動において、社会的公正や環境などへの配慮を組み込み、従業員、投資家、地域社会等の利害関係者に対して責任ある行動をとるとともに、説明責任を果たしていくことが求められています(企業の社会的責任)。
また、SNSが普及するインターネット社会では、ハラスメント問題を放置したり、その対応を間違ってしまうと、会社や事業の信用・ブランドに対する影響は甚大です。
そのため、ハラスメント問題を放置せずに、適切な方針やスケジュールを確定させた上で早期対応が求められます。
弁護士によるメンタルヘルス・ハラスメント対策
①コンプライアンス/ハラスメント研修の講師
ハラスメントを行ってしまった社員の中には、問題点を十分に理解できていない社員や知らなかった社員もいます。
そのため、ハラスメントを事前に予防するため、また、再発を防止するためには、コンプライアンス研修やハラスメント研修が有効な手段となります。
これらの研修は、CSR(企業の社会的責任)活動の一環ともいえ、コンプライアンスが強く求められる現代社会において、多くの企業が取り組んでいますし、その取り組みを社内外にアピールすることで、企業イメージを向上できます。コンプライアンス研修やハラスメント研修は、弁護士に依頼できますので、是非、ご相談ください。
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②雇用契約書、誓約書及び就業規則の整備
ハラスメント問題への対応では、まずはハラスメント行動を発生させないように、また、発生したときに適切に対応できるように、雇用契約書、誓約書や就業規則を整備しておく必要があります。
特に、懲戒処分を行うためには、就業規則で懲戒事由が明記されている必要がありますし、懲戒手続も整備しておく必要があります。
また、SNSやインターネットサービスの利用による誹謗中傷やハラスメント対応でも雇用契約書や誓約書、就業規則にわかりやすく明確に明記することで、その発生を事前に予防可能です。
弁護士は、法的視点から、ハラスメント行為の発生を予防するため、また、発生したときに適切に対応できるように雇用契約書、誓約書や就業規則を整備するためのサポートを行います。
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③ハラスメントに起因する紛争・訴訟への対応
ハラスメントを行う社員の中には、自分の問題点を理解できず、他人に責任を転嫁する人もいるため、ハラスメントの是正を求めたり、懲戒処分を行うとき、自己の非を認めず、紛争・訴訟に発展する場合があります。
具体的には、従業員本人、労働組合及び従業員側弁護士との交渉だけでなく、労働審判や労働訴訟に発展することもあります。
これらの対応は、会社(経営者)や人事担当者だけでは対応が難しく、弁護士によるサポートが必要となります。弁護士は、会社の意向を踏まえながら、会社の代理人として、従業員本人・労働組合・従業員側弁護士・労働審判・労働訴訟への対応を行います。
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④ハラスメント行為の対応策へのアドバイス
ハラスメント行為が発生したとき、対応する必要があるか、また、どのような対応するべきかについて、弁護士がアドバイスします。
まずは、ハラスメント行為の改善に向けたアドバイスを行いますが、効果がない場合、解雇や懲戒処分を視野に入れることも必要です。また、必要となる証拠を確保し、具体的な事実を記載した書面を作成しなければなりません。弁護士は、問題行為が発生したとき、その対応方法について、法的な視点からアドバイスします。
弁護士は、ハラスメント行為が発生したとき、その対応方法について、法的な視点からアドバイスし、サポートします。例えば、懲戒処分に対するサポートとして、事実関係の調査、ヒアリングの立会、懲罰委員会の出席・アドバイス、懲戒処分通知書・理由書の作成を行います。
⑤事実関係の調査及びヒアリングへの立会
ハラスメント被害の申告があったとき、申告者が故意に誰かを陥れるため、また、事実や証拠に基づかない思い込みによる申告もあるため、正確な事実関係の調査が必要となります。また、当事者や関係者からヒアリングが必要となる場合もあります。
弁護士は、ハラスメントの事実関係の調査やヒアリングの立会を行います。
弁護士に依頼するメリット
メリット1 社内外に対する信用が向上します。
ハラスメント行動を未然に予防するため、また、再発防止策に取り組むために、弁護士にコンプライアンス研修やハラスメント研修を依頼することもできます。また、研修だけでなく、コンプライアンス委員会に第三者であり、かつ、法律専門家である弁護士が参加することによって、積極的にCSR(企業の社会的責任)に取り組んでいることが明確となります。
弁護士が研修を担当し、また、コンプライアンス委員会に参加することによって、会社の社内及び社外に対する信用が向上し、ブランディングも強化されます。もちろん、会社の信用の向上によって、人材の採用面や定着面にもプラスに働くため、会社の生産性の向上やコストの削減にもつながります。また、コンプライアンス違反を未然に予防することで、紛争・訴訟リスクも軽減されます。
メリット2 紛争・訴訟リスクを軽減します。
ハラスメント社員(加害者側)に対する解雇が必要であるとしても、その手続きを間違えてしまうと、解雇が認められず、会社が高額の金銭(例えば、1000~2000万円)の支払が求められることもあります。ハラスメントを起こした社員対応を弁護士に依頼すれば、このようなリスクを回避する方法を検討し、よりリスクの少ない方法で、ハラスメントを起こした社員対応を行うことが可能です。
メリット3 経営者や人事担当者の負担が軽減されます。
ハラスメント問題への対応は、経営者や人事担当者の皆様にとっては、精神的・物理的な負担が大きく、また、文章や書面の作成が不慣れな場合、莫大な労力や時間がかかってしまうことがあります。その反面、ハラスメント問題対応のために、新たに従業員を採用することは、コスト面等から経営判断として難しいといえます。
ハラスメント問題への対応を弁護士に依頼すれば、経営者や人事担当者の皆様の負担が大きく軽減され、本質的な業務に専念することで生産性をアップさせることが可能です。
メリット4 職場環境の整備
ハラスメント対応を間違えないようにするためにも、日常的に、弁護士に労働条件を相談することによって、法的枠組みを踏まえて労働条件を整備することができ、ハラスメントのリスクを予防できます。
特に、労働人口・生産年齢人口の減少、ダイバーシティマネジメントが求められる現代社会において、人材の採用や定着が企業の業種や規模にかかわらず、課題となっています。
労務・人事トラブルに精通する弁護士に依頼することによって、従業員の方々にとっても安心して、働きやすい環境をつくり、より本質的な業務に専念し、生産性を向上できます。
弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。
費用
1 従業員・従業員代理人(弁護士)との窓口対応・交渉 | ①着手金 330,000円~ ②出張日当 55,000円/回 ③報酬金 経済的利益の10%(税別) |
2 民事訴訟の代理対応 | ①着手金 550,000円~ ②出廷日当 55,000円/回 ③報酬金 経済的利益の10%(税別) |
3 ハラスメント調査対応(関係者へのヒアリング、調査報告書の作成) | 調査内容に応じて、提案させていただきます。 |
4 ハラスメント予防研修 | 顧問契約サービスの一環として、顧問料金の範囲内で対応可能です。 |
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Last Updated on 2024年7月2日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔 この記事の監修者 弁護士法人かける法律事務所 弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添い、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、日々挑戦し、具体的かつ実践的な解決プランを提案することで、お客様から選ばれるリーガルサービスを提供し、お客様の持続可能な成長に向けて貢献します。
代表弁護士 細井大輔