解雇に伴う仮処分の内容や注意点とは?問題社員(モンスター社員)対応について弁護士が解説します。-解雇裁判について-

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解雇に伴う仮処分の内容や注意点とは?問題社員(モンスター社員)対応について弁護士が解説します。-解雇裁判とは?-

問題社員対応に関して、よくある相談例

①問題社員を解雇したら、大阪地方裁判所に仮処分を申し立てられました。

②解雇に伴う仮処分で注意すべきことを教えてほしい。

③仮処分で負けると、どうなりますか?

④地位保全仮処分と賃金支払仮処分の違いを教えてほしい。

⑤保全の必要性とは何ですか?

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解雇に伴って従業員が会社に対して請求する手段(方法)とは

解雇は、会社による従業員に対する一方的な雇用契約の終了(解消)であり、従業員にとっては不利益処分といえます。そのため、解雇に伴って労働トラブルや労働裁判に発展することが頻繁にあります。

特に、会社にとって問題社員(モンスター社員)であると考えている場合、その従業員は、「自分は悪くない」、「会社が問題である」とも考えているため、自分が否定されたことについて感情的になり、労働トラブルが深刻化する事例もあります。

解雇に伴って、従業員が会社に対して法的な請求をする主な方法は、以下のとおりです。

①従業員代理人(弁護士)による裁判外交渉

②労働組合の加入又は結成による団体交渉の要求

③労働審判

④労働裁判(民事訴訟)

⑤仮処分

従業員が会社に対して請求する手段(方法)によって、会社は、その対応方法を変えていく必要がありますが、このコラムでは、「仮処分」について説明します。

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解雇に伴う仮処分とは?

解雇トラブルでは、従業員から仮処分が申し立てられることがあります。

解雇トラブルにおいて、従業員は、解雇の有効性を判断してもらうために、裁判所に民事訴訟を提起することができます。もっとも、民事訴訟(本案)の判断を待っていると、従業員は、その間、賃金を受け取ることができず、生活に窮してしまうこともあります。

そのような緊急性がある場合に、従業員は、民事訴訟(本案)の結果が出るまでの暫定的な措置として、民事訴訟とは別に、仮処分という手続を申し立てることができます。

解雇事件の仮処分には、①雇用契約上の権利を有することを仮に定める地位保全の仮処分(地位保全仮処分)と②賃金の仮払いを求める仮処分(賃金仮処分)があります(民事保全法23条2項)。

このうち、①地位保全仮処分については、従業員としての地位を仮に定めておかなくとも、当面の収入さえ確保されれば、暫定的な措置として足りるため、特殊的な事情(*)がない限り、認められるケースは少ないです。

そのため、基本的には、②賃金仮処分が主要な争点となります。

*特殊的な事情とは、従業員としての地位が在留資格の要件になっていることや社会保険の資格維持との関係で特殊な事情がある場合等です。

賃金仮処分とは?

賃金仮処分とは、解雇無効を主張し、賃金請求権を被保全権利として賃金の仮払いを求める仮処分です。

仮処分の手続では、仮処分を申し立てた従業員は「債権者」、会社は「債務者」と呼ばれます。

仮処分を進めるためには、会社側(債務者)が立ち会うことができる審尋期日を設けることが必要であるため(民事保全法23条4項本文)、実際に審尋期日が開かれ、債権者(従業員)と債務者(会社)との間で主張立証が積み重ねられます。審尋期日は、通常、非公開の法廷で、裁判官、債権者(従業員)、債権者(会社)の3者が出席して行われます。

その一方で、仮処分は、緊急性が高いことを理由に申し立てられているため、手続が迅速に進められることが多く、数回の審尋期日(2~4回)で判断されたり、審尋期日が開かれる間隔も、短期間で設定されることがあります。

賃金仮処分では、①解雇の有効性(解雇に合理的な理由があるかどうか)や②保全の必要性(従業員の困窮の程度)が主たる争点となります。②の「保全の必要性」とは、従業員が暫定的に賃金の支払を受ける必要性・緊急性があるかという要件です。賃金が支払われないときに、従業員やその家族の生活が危機的な状況になるかどうかによって判断されます。

 具体的には、従業員の他の収入の有無・内容、預貯金等の資産の有無、同居家族の収入の有無、収支の状況等によって判断され、通常は、債権者(従業員)側から、家計収支表や資産状況に関する資料(預金通帳の写し等)が提出されることになります。

 債務者(会社)としては、従業員から提出された主張や資料に対して反論を行い、「保全の必要性」がないことを適切に主張していくことになります。

 万が一、賃金仮処分が認められる場合、賃金仮処分決定から1年程度の賃金仮払いが認められたり、民事訴訟(本案)の第一審判決言渡しまでの賃金仮払いが認められることがあります。

 もっとも、必ず従前の賃金全額が認められるわけではなく、家計の状況を見ながら、著しい損害を回避するために必要な金額を裁判所が判断することになります。

*仮処分では、通常、申立てを行った債権者に担保の支払が求められますが、賃金仮処分の場合は、賃金仮払いの趣旨から無担保で発令されます。

仮処分の注意点とは?

仮処分に対応しなければ、従業員の主張を前提とする仮処分決定が出されること

 解雇に十分に理由があって、従業員の主張が虚偽であったり、誇張したものであったとしても、仮処分の審尋期日に出席しなかったり、適切な反論をしなかった場合には、従業員の主張を前提とする仮処分が出されてしまうことになります。

 従業員の主張が理不尽なものであったとしても、また、到底納得できないものであったとしても、仮処分が申し立てられれば、対応しなければなりません。

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労働裁判と比較して、迅速に審理が進んでいくこと

 通常の労働裁判(民事訴訟)では、1~2か月に1回程度のペースで裁判期日が行われ、判決が出るまでに、1~2年間くらいの審理期間を要することもあります。十分に時間をかけて審理が行われるため、主張や証拠を慎重に精査する時間的余裕もあります。

 もっとも、仮処分では、迅速に手続を進めることが要求され、審尋期日も比較的短期間(2~4週間)の間隔で設定されるため、会社側にとって、短期間で主張や証拠を整理する必要に迫られます。

 特に、会社側の主張を裏付けるため、関係者の陳述書も準備しなければならず、その負担は大きいものになります。

仮処分と並行して、労働裁判(本案訴訟)が申し立てられること

 解雇に伴う仮処分では、通常、労働裁判(本案訴訟)が並行して申し立てられます。そのため、会社側としては、仮処分と労働裁判(本案訴訟)という2つの裁判手続を同時に進めていかなければなりません。

 もちろん、解雇理由があるかないかという点では共通するものの、仮処分と労働裁判(本案訴訟)では、争点が異なることもあって、二重に準備しなければならないという点では負担が大きくなります。

 また、仮処分では、迅速に手続を行うことが求められるため、労働裁判(本案訴訟)に先立って、関係者の陳述書等を準備しなければならず、短期決戦となることを覚悟しなければなりません。

仮処分の活用によって労働トラブルの解決を目指すこと

 仮処分では、審尋期日が設定され、また、早期に争点整理も可能となるため、仮処分の審尋期日の中で、裁判所を介して話し合うことによって労働トラブルを解決できることもあります。

 仮処分において、裁判所に対して会社の主張や証拠を十分にアピールして、会社に有利な形で和解を目指すこともできます。従業員が申し立てた仮処分への対応は、会社や担当者にとって大きな負担にもなってしまいますが、適切に対応することで、迅速かつ適切に、かつ、会社側にとって有利な内容で解決できることがあります。

弁護士による問題社員(モンスター社員)対応

雇用契約書・誓約書・就業規則の作成サポート

 問題行動が業務命令違反である場合、懲戒処分を行うためにも、雇用契約書、誓約書や就業規則において懲戒事由を明確に定めておくことが必要です。また、問題行動が会社にとって重大な影響を与えることを明確にするためにも、雇用契約書・誓約書・就業規則等の整備が必要不可欠です。

 弁護士は、企業(経営者)の立場で、労働条件の整備(雇用契約書・誓約書・就業規則の作成)をサポートします。

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問題社員の解決に向けたサポート

 弁護士は、問題社員の対応について、冷静かつ客観的に分析・アドバイスを行い、問題社員の解決に向けたサポートを行います。問題社員の対応について、経営者が1人で抱え込まないよう、経営者の立場に立って必要なアドバイス・サポートを行います。

 弁護士は、問題社員との円満退職に向けたアドバイス・サポートもできます。また、問題社員に対して、注意や指導を行うときに、書面による注意や指導(改善命令書や指導書)の作成サポートもできます。

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懲戒処分に向けたアドバイス

 弁護士は、会社(経営者)の立場に立って、法的な視点から、懲戒処分に向けて、適切な手続を踏むことができるようにアドバイスを行います。また、会社(経営者)が懲戒処分の判断を行うに際して、リスクの種類や内容を分析し、アドバイスを行います。

 特に、問題行動を理由とする懲戒処分を行う場合、事実関係の確定や事後的な紛争に備えた証拠の確保も必要であり、関係者へのヒアリングや懲戒委員会への立会も含めて、弁護士はサポートできます。

 弁護士によるサポートによって、適切な手続を行いながら、リスクを踏まえた判断・アクションが可能となります。

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労働トラブルの窓口対応/代理交渉

 対象従業員との間で懲戒処分の有無や内容を含めてトラブルとなる場合、ケースによっては、弁護士に窓口対応や代理交渉を依頼することも検討するべきです。

 特に、労働者側代理人(弁護士)が就任した場合や労働組合との団体交渉が必要となる場合には、弁護士によるサポートが有効かつ効果的です。

 会社(経営者)の意向を尊重しながら、民事裁判等の重大なリスクに発展する前に解決できるように最善を尽くします。

労働審判や労働裁判の対応

 労働審判や労働裁判では、裁判所が労働法や裁判例に従い判断するため、法的視点から、主張や証拠を準備して、適切なタイミングで提出する必要があります。この業務は、会社担当者のみで対応することが困難であるとともに、裁判業務に精通している弁護士が対応することが最も適切といえます。

問題行動を予防するための研修サポート

 問題行動を行ってしまった社員の中には、問題点を十分に理解できていない社員や知らなかった社員もいます。

 そのため、問題行動を事前に予防するため、また、再発を防止するためには、コンプライアンス研修やハラスメント研修が有効な手段となります。

 これらの研修は、CSR(企業の社会的責任)活動の一環ともいえ、コンプライアンスが強く求められる現代社会において、多くの企業が取り組んでいますし、その取り組みを社内外にアピールすることで、企業イメージを向上できます。コンプライアンス研修やハラスメント研修は、弁護士に依頼できますので、是非、ご相談ください。

問題社員(モンスター社員)対応については、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください

 弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

 顧問契約では 問題社員(モンスター社員)対応、未払い賃金対応、懲戒処分対応、ハラスメント対応、団体交渉・労働組合対応、労働紛争対応(解雇・雇止め、残業代、ハラスメント等)、労働審判・労働裁判対応、雇用契約書・就業規則対応、知財労務・情報漏洩、等の労働問題対応を行います。

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Last Updated on 2024年7月31日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔

この記事の監修者

弁護士法人かける法律事務所 
代表弁護士 細井大輔

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