会社の指示に従わない問題社員への対処法!~懲戒処分と懲戒解雇について~

  • 問題社員対応、解雇・雇止め
業務命令に従わない問題社員について

業務命令に従わない問題社員とは?

業務命令違反とは、会社や上司が従業員に対して業務について指示や命令をしているが、正当な理由がないにもかかわらず、その命令や指示に従わないことをいいます。

業務命令に従わない社員の具体例:

①残業しないように口頭で注意しているが、長時間の残業を頻繁に行う。

②ハラスメントが懸念されており、慎重に行動するように伝えているが、反省しない。

③会社のマニュアルに従うように注意しているが、マニュアルを確認せず作業を行う。

④会社全体でDXを推進するため、ITツールの導入を指示しているが、管理部門の従業員が協力しない。

⑤業務でミスがあったため、始末書の提出を指示しているが、提出しない。

従業員が業務命令に従わない場合、対象従業員だけでなく、その周辺にいる従業員のモチベーションを低下させますし、生産性も低下させてしまいます。業務命令違反が常態化してしまうと、企業の文化や意識にも悪影響を与えます。

業務命令違反を繰り返し行う問題社員に対して、会社(経営者)は毅然とした対応を行う必要があります。

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業務命令に従わない問題社員への対応方法

 多くの会社では、就業規則で「労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。」と定めており(厚生労働省・モデル就業規則)、従業員の業務命令に従う義務を確認するとともに、懲戒事由を定めています。

 そのため、業務命令に従わない問題社員には懲戒処分も検討する必要があります。

懲戒事由の具体例:

法人内で、指示命令に正当な理由なく違反し、求められた諸提出書類を提出しないとき

懲戒解雇事由の具体例:

再三にわたり職務上の指示命令に従わず、法人の秩序を著しく乱したり、乱そうとしたとき

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業務命令違反による懲戒処分のための手順

①業務命令を客観的に把握できるように文書又はメール等を行う。

 口頭による業務命令では、紛争に発展した場合、業務命令を行ったことを立証できないこともあるため、注意が必要です。

②業務命令に違反していることを確認する。

 対象従業員から業務命令に従っているという反論の可能性もあるため、その反論を防ぐ証拠が必要です。

③業務命令に違反したことについて正当な理由があるかどうかを検討する。

 正当な理由がある場合、業務命令違反を理由とする懲戒処分が難しくなります。特に、業務命令に従わない従業員の中には、正当な理由があるという反論内容を準備しながら、意図的に従わない人もいるため、慎重に検討する必要があります。

④対象従業員から業務命令に違反した理由や原因を確認する(弁明の機会の付与)。

 適正な懲戒処分を行うためには、対象従業員に反論の機会を与えることが必要です。これをしないまま、懲戒処分を下すと、懲戒処分の有効性が否定されることもあります。

⑤就業規則に規定する懲戒処分の事由と手続を確認し、懲戒処分の種類(けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨退職及び懲戒解雇)を決定します。

 この際、就業規則のどの条文に違反するかどうかも確認してください。また、懲戒処分の種類を検討するに際して、不当に重すぎないかどうかも検討する必要があります。

*就業規則で懲戒委員会の開催を規定している場合、懲戒委員会を開催する必要もあります。

⑥懲戒処分通知書を作成し、対象従業員に対して懲戒処分を通知する。

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業務命令違反を適用する際のポイントと注意点

業務命令を文書又はメール等で行うこと

 業務指示の方法や内容が十分ではなかったり、業務指示自体の証拠がない場合、業務指示違反を理由に懲戒処分や解雇をすることは法的に難しくなります。

 まずは、業務指示違反について、客観的に立証できる状況を確保することが必要です。そのため、業務命令違反を理由に懲戒処分を検討するためには、業務命令を文書又はメール等で行うことが望ましいといえます。

冷静に判断する。

 業務指示違反の証拠(書面やメール、チャット等)をしっかりと確保したうえで、従業員本人と面談すれば、対象従業員の行動が改善されたり、懲戒処分や退職勧奨・解雇処分もスムーズに進めることができます。

 業務指示に従わないことだけを理由に、感情的になり、安易に解雇や懲戒処分を行うことは、トラブルをさらに深刻化させ、会社にとっても予期しない重大な損害が生じることもあります。業務命令違反を理由に懲戒処分を行う場合、冷静に判断する必要があります。

懲戒解雇は最終的な手段であり、他に方法がないかを検討する。

 対象従業員に対する懲戒解雇が必要であるとしても、その手続を間違えてしまうと、裁判で解雇が認められず、会社が高額の金銭(例えば、1000~2000万円)の支払を求められることもあります。

 そのため、懲戒解雇は最終的な手段であり、他に方法(例えば、退職勧奨や合意退職)がないかを検討することが必要となります。安易な懲戒解雇は、会社にとっても、重大な損失につながることもあります。

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弁護士による問題社員対応について

雇用契約書・誓約書・就業規則の作成サポート

 業務命令違反によって懲戒処分を行うためにも、雇用契約書、誓約書や就業規則において懲戒事由を明確に定めておくことが必要です。また、業務命令違反が会社にとって重大な影響を与えることを明確にするためにも雇用契約書、誓約書や就業規則の整備が必要不可欠です。

 弁護士は、企業(経営者)の立場で、労働条件の整備(雇用契約書・誓約書・就業規則の作成)をサポートします。

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懲戒処分に向けたアドバイス

 弁護士は、会社(経営者)の立場に立って、法的な視点から、懲戒処分に向けて、適切な手続を踏むことができるようにアドバイスを行います。また、会社(経営者)が懲戒処分の判断を行うに際して、リスクの種類や内容を分析し、アドバイスを行います。

 特に、業務命令違反を理由とする懲戒処分を行う場合、事実関係の確定や事後的な紛争に備えた証拠の確保も必要であり、関係者へのヒアリングや懲戒委員会への立会も含めて、弁護士はサポートできます。

 弁護士によるサポートによって、適切な手続を行いながら、リスクを踏まえた判断・アクションが可能となります。

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懲戒処分通知書の作成

 弁護士は、会社(経営者)の立場に立って、法的な視点から、懲戒処分通知書の作成を行います。懲戒処分通知書では、懲戒理由や就業規則の根拠条文を具体的に記載する必要があり、労働法を中心とする専門的な知識や経験が必要となります。

労働トラブルの窓口対応/代理交渉

 対象従業員との間で懲戒処分の有無や内容を含めてトラブルとなる場合、ケースによっては、弁護士に窓口対応や代理交渉を依頼することも検討するべきです。

 特に、労働者側代理人(弁護士)が就任した場合や労働組合との団体交渉が必要となる場合には、弁護士によるサポートが有効かつ効果的です。

 会社(経営者)の意向を尊重しながら、民事裁判等重大なリスクに発展する前に解決できるように最善を尽くします。

業務命令違反を予防するための研修サポート

 業務命令違反を行ってしまった社員の中には、問題点を十分に理解できていない社員や知らなかった社員もいます。

 そのため、業務命令違反を事前に予防するため、また、再発を防止するためには、コンプライアンス研修やハラスメント研修が有効な手段となります。

 これらの研修は、CSR(企業の社会的責任)活動の一環ともいえ、コンプライアンスが強く求められる現代社会において、多くの企業が取り組んでいますし、その取り組みを社内外にアピールすることで、企業イメージを向上できます。コンプライアンス研修やハラスメント研修は、弁護士に依頼できますので、是非、ご相談ください。

問題社員対応については弁護士にご相談を

弁護士への相談例:

①懲戒処分通知書の作成方法がわからない。

②懲戒処分をしたいが、どのような手続を踏んだらいいかわからない。

③業務命令違反を理由に懲戒解雇をしたが、解雇が無効であると主張されている。

④問題社員が労働組合を立ち上げ、団体交渉を要求している。

 弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

 顧問契約では、問題社員対応、未払い賃金対応、ハラスメント対応、団体交渉・労働組合対応、労働紛争(解雇、残業代、ハラスメント等)等の労働問題対応を行います。

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Last Updated on 2024年7月31日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔

この記事の監修者

弁護士法人かける法律事務所 
代表弁護士 細井大輔

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