パワハラでよくあるご相談
①根気よく注意や指導をしていますが、パワハラと言われました。
②パワハラの基準がよくわからない。
③業務改善命令がパワハラと言われないかどうか不安がある。
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業務改善命令(注意や指導)の必要性
もちろん、問題社員の中には、注意や指導をされても、変わるつもりがない方もいます。ただ、問題行動であることを知らない従業員や改善方法がわからない従業員が多くいることも事実です。根気よく、また、丁寧に注意や指導をすることによって問題行動が改善され、実力を発揮できる方も多くいます。
会社では、注意や指導をしても、はじめから無駄であるとか、退職・解雇という選択肢しかないと思い込んでしまい、必要な注意や指導をしないケースもあります。
しかし、必要な注意や指導を行わず、問題社員対応をしてしまうと、深刻な事態を招いてしまうことが多くあります。
例えば、必要な注意や指導を行わず、強硬な手段(退職勧奨や解雇)をとってしまうと、対象社員の反発が強くなり、労働紛争や労働裁判に発展し、対話やコミュニケーションによる解決ができなくなってしまいます。
まずは、問題社員には注意や指導をしても、無駄であるという思い込みを捨てて、注意や指導によって問題行動が改善される可能性があることを関係者で共有する必要があります。
また、問題社員への注意や指導を行うプロセスの中で、会社の育成プロセス(指導・教育体制)の課題や改善策が発見され、会社の成長につながる機会になります。
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注意や指導(業務改善命令)の注意点―パワハラと言われないように―
その一方で、業務改善命令(注意や指導)を行う中で、パワーハラスメント(パワハラ)と言われないように注意する必要があります。
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)とは、A)職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、B)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 C) 従業員の就業環境が害されるものをいいます。
パワハラの具体例は、以下のとおりです。
パワハラの類型(具体例)
①身体的な攻撃(殴打、足蹴りを行う。相手に物を投げつける。)
②精神的な攻撃(人格を否定するような言動を行う。必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う。他の労働者の前で、大声で威圧的な叱責を繰り返し行う。)
③人間関係からの切り離し(特定の労働者を仕事から外し、長時間別室に隔離する。1人の労働者に対し、同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる。)
④過大な要求(新入社員に必要な教育を行わないまま、到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し、厳しく叱責する。)
⑤過小な要求(管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる。)
⑥個の侵害(労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする。)
ここで大事なポイントは、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる業務指示や指導について、パワハラには該当しないとされていることです。つまり、間違った言動に対して、注意することや行動を改めさせることが問題になるわけではありません。
業務改善命令(注意や指導)を行う際に、過度にパワーハラスメント(パワハラ)と言われることに怯えないようにする必要があります。
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業務改善命令(注意・指導)とパワハラの境界線
①身体的な攻撃はパワハラと判断される可能性が高いこと
身体的な攻撃は、問題行動の改善を求めるための手段として不相当であり、パワハラと判断される可能性が高いといえます。仮に、注意や指導の必要性が高いとしても、身体的な攻撃を加える必要はありません。
部下に対して注意や指導を行うとき、冷静な対応が必要です。労働トラブルや懲戒事例で問題となりやすいパワハラの類型の一つが身体的な攻撃です。また、身体的な攻撃とは異なりますが、土下座の要求についても、手段として不相当であり、パワハラと判断される可能性が高いので、注意する必要があります。
身体的攻撃の具体例:殴打、足蹴り、肩をたたく、物を投げること
②侮辱的な発言はパワハラと判断される可能性が高いこと
身体的な攻撃だけでなく、侮辱的な発言についても、パワハラと判断される可能性が高いといえます。
問題行動の改善を求めるための方法として不相当であり、仮に、注意や指導の必要性が高いとしても、侮辱的な発言を行う必要はありません。部下等が重大なミスを行ったり、繰り返しのミスを行う場合、多忙な業務の中で冷静さを失うこともありますが、侮辱的な発言はハラスメントと判断される可能性が高いことを理解しておく必要があります。
侮辱的な発言
・給料泥棒だ。
・会社にとって役に立たない存在だ。
・馬鹿(あほ)な人間だ。
③問題行動の内容を特定せず、単に強く叱責すること
問題行動の内容を特定せず、単に叱責だけだと、その注意や指導が正しいかどうかについて、事後的に判断することはできません。
このような場合、単に叱責が嫌がらせのために行われたと判断される可能性があります。そのため、注意や指導を行う上では、問題行動の内容を特定した上で、具体的な改善方法を指摘すべきです。また、期限等を設ける場合にも適切な期限を設けておく必要があります。
注意や指導が単に嫌がらせやいじめといわれないように、注意や指導が必要な理由を明確にした上で、不可能なことを要求しないように、また、合理的な期限を設定するように注意してください。
パワハラかどうか判断するに際して、目的や合理性が問われるため、注意や指導の内容の適切さが事後的に判断できるようにしておく必要があります。
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改善命令(注意や指導)を書面で作成するときのポイント
指導書や改善命令書では、問題行動を具体的に特定する必要があります。A)いつ、B)どこで、C)誰が、D)誰に対して、E)どのような問題行動をしたのか具体的に指摘する必要があります。
問題行動が特定されなければ、不当な注意や指導であると逆に反論されてしまうことがあります。できる限り、主観的な評価を避けて、客観的な事実を記載すべきです。この際、問題行動を裏付ける証拠があるかどうかも確認してください。
また、問題行動を指摘した上で、改善すべき内容や時期(期限)を明確にする必要があります。問題行動が改善されたかどうかを含めて、判断するために改善すべき内容は具体的である必要がありますし、時期(期限)も設定しておく必要があります。
ポイント
・問題行動の内容を特定すること
・原因や課題を検討して、不可能なことを要求しないこと
・合理的な時期(期限)を設定すること
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弁護士による問題社員(モンスター社員)対応
①問題社員の解決に向けたサポート
弁護士は、問題社員の対応について、冷静かつ客観的に分析・アドバイスを行い、問題社員の解決に向けたサポートを行います。問題社員の対応について、経営者が1人で抱え込まないよう、経営者の立場に立って必要なアドバイス・サポートを行います。
弁護士は、問題社員との円満退職に向けたアドバイス・サポートもできます。また、問題社員に対して、注意や指導を行うときに、書面による注意や指導(改善命令書や指導書)の作成サポートもできます。
②懲戒処分に向けたアドバイス
弁護士は、会社(経営者)の立場に立って、法的な視点から、懲戒処分に向けて、適切な手続を踏むことができるようにアドバイスを行います。また、会社(経営者)が懲戒処分の判断を行うに際して、リスクの種類や内容を分析し、アドバイスを行います。
特に、問題行動を理由とする懲戒処分を行う場合、事実関係の確定や事後的な紛争に備えた証拠の確保も必要であり、関係者へのヒアリングや懲戒委員会への立会も含めて、弁護士はサポートできます。
弁護士によるサポートによって、適切な手続を行いながら、リスクを踏まえた判断・アクションが可能となります。
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③労働トラブルの窓口対応/代理交渉
対象従業員との間で懲戒処分の有無や内容を含めてトラブルとなる場合、ケースによっては、弁護士に窓口対応や代理交渉を依頼することも検討するべきです。
特に、労働者側代理人(弁護士)が就任した場合や労働組合との団体交渉が必要となる場合には、弁護士によるサポートが有効かつ効果的です。
会社(経営者)の意向を尊重しながら、民事裁判等の重大なリスクに発展する前に解決できるように最善を尽くします。
④労働審判や労働裁判の対応
労働審判や労働裁判では、裁判所が労働法や裁判例に従い判断するため、法的視点から、主張や証拠を準備して、適切なタイミングで提出する必要があります。この業務は、会社担当者のみで対応することが困難であるとともに、裁判業務に精通している弁護士が対応することが最も適切といえます。
⑤問題行動を予防するための研修サポート
問題行動を行ってしまった社員の中には、問題点を十分に理解できていない社員や知らなかった社員もいます。
そのため、問題行動を事前に予防するため、また、再発を防止するためには、コンプライアンス研修やハラスメント研修が有効な手段となります。
これらの研修は、CSR(企業の社会的責任)活動の一環ともいえ、コンプライアンスが強く求められる現代社会において、多くの企業が取り組んでいますし、その取り組みを社内外にアピールすることで、企業イメージを向上できます。コンプライアンス研修やハラスメント研修は、弁護士に依頼できますので、是非、ご相談ください。
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業務改善命令(注意・指導)やパワハラ対応については、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください
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Last Updated on 2024年10月22日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔 この記事の監修者 弁護士法人かける法律事務所 弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添い、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、日々挑戦し、具体的かつ実践的な解決プランを提案することで、お客様から選ばれるリーガルサービスを提供し、お客様の持続可能な成長に向けて貢献します。 私は、日本で最も歴史のある渉外法律事務所(東京)で企業法務(紛争・訴訟、人事・労務、インターネット問題、著作権・商標権、パテントプール、独占禁止法・下請法、M&A、コンプライアンス)を中心に、弁護士として多様な経験を積んできました。その後、地元・関西に戻り、関西の企業をサポートすることによって、活気が満ち溢れる社会を作っていきたいという思いから、2016年、かける法律事務所(大阪・北浜)を設立しました。弁護士として15年の経験を踏まえ、また、かける法律事務所も6年目を迎え、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、関西の企業・経営者の立場に立って、社会の変化に対応し、お客様に価値のあるリーガルサービスの提供を目指します。
代表弁護士 細井大輔
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