協調性がない問題社員とは?
・他の従業員とよく喧嘩する。
・お客様から頻繁にクレームが発生する。
・できない理由を他人のせいにして、責任転嫁する。
・独自の理論をふりかざしたり、自分のやり方に固執する。
・正当な業務命令や指導に対して反発し、従わない。
協調性がない問題社員については、従業員や取引先とトラブルを生じさせることもあり、周囲への影響も甚大といえます。また、トラブルが頻繁に起こることによって、業務の生産性が低下し、経営者や人事担当者にとっても、大きな負担となります。しかも、協調性がない問題社員については、自分の考えに固執する方も多く、教育や指導では改善できないこともあります。
事業を持続的に成長させていくためには、協調性がない問題社員への対応は、重要な経営課題といえ、早急に取り組むべき問題です。
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協調性がないことは解雇理由になる?
協調性がないことも、就業規則に規定する解雇事由(例えば、「業務の遂行に必要な能力を著しく欠くとき」)に該当すれば、解雇理由になり得ます。
ただし、協調性がないことは、客観的証拠の確保が難しいこともあり、裁判では解雇理由の立証が難しい類型の一つといえます。そのため、協調性がない問題社員に対して、直感的に解雇が必要であると判断しても、裁判において、解雇理由が認められるかどうかを慎重に検討すべきといえます。特に協調性がない問題社員は、自らの問題を他人に責任転嫁し、解雇が無効であると主張してくることがあります。
そのため、協調性を理由に解雇する場合、以下のポイントを具体的に検討した上で行う必要があります。
①従業員がどのような問題行動を行ったのか?
②問題行動を行った理由や原因はどのようなものか?
③問題行動によって、どのように業務上の支障が生じたのか?
④問題行為に対して注意や指導を行ったのか?
⑤注意や指導に対して反抗的な態度をとったか?改善の見込みはないのか?
*例えば、人事考課における360度評価(多面評価)において協調性の項目が低くても、そのことだけを理由に解雇することは、一般的に難しいと考える必要があります。裁判では、具体的な問題行動や注意や指導の有無、改善の見込みが問題となります。
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協調性欠如を理由に解雇できる要件
協調性欠如を理由とする解雇でも、①客観的に合理的な理由を欠き、②社会通念上相当であると認められない場合、解雇権を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。これを解雇権濫用法理といいますが、協調性欠如を理由とする解雇する場合でも、解雇権濫用法理の高いハードルを超えなければなりません。特に、協調性欠如を理由とする解雇では、客観的な証拠が確保できていないことも多く、このハードルが相当高いことを理解しておく必要があります。
【東京高判平成28年11月24日ー協調性の欠如を理由に解雇を有効と判断した裁判例の紹介】
「控訴人は正社員12名、パート12名ほどの小規模な会社であり、検品部門にはそのうち半数の職員が在籍しているところ、被控訴人をこのまま雇用し続ければ、その言葉遣いや態度等により、他の職員らとの軋轢がいっそう悪化し、他の職員らが早退したり退職したりする事態となり、とりわけ検品部門は人数的にも業務的にも控訴人の業務において重要な役割を果たしており、その責任者や他の職員が退職する事態となれば、控訴人の業務に重大な打撃を与えることになると控訴人代表者が判断したのも首肯できるものであると認められる。しかも、上記のとおり控訴人は小規模な会社であり、被控訴人を他の部門に配置換えをすることは事実上困難であるから(原審における控訴人代表者の尋問の結果)、この方法によって職員同士の人間関係の軋轢を一定程度緩和させて職場環境を維持することもできず、解雇に代わる有効な代替手段がないことも認められる。そして、前記認定のとおり、控訴人代表者は、これまで再三にわたり、被控訴人に対し、言葉遣いや態度等を改めるよう注意し、改めない場合には会社を辞めるしかないと指導、警告してきたにもかかわらず、被控訴人は反省して態度を改めることをしなかったものである。
そうすると、被控訴人については、上記のとおり就業規則に定める解雇事由に該当し、しかも、本件解雇はやむを得ないものと認められるから、本件解雇につき客観的に合理的な理由がないとか、社会通念上も相当として是認できないとかいうことはできない。」
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協調性がない問題社員に辞めてもらう際のポイントと注意点
①解雇以外の選択肢を検討する。
協調性がない問題社員について、周囲への影響も大きく、また、生産性の低下にもつながり、会社にとっては重大な問題といえます。もっとも、解雇するとなると、客観的証拠が必要となり、協調性の欠如を理由とする場合、「言った、言わない」の問題となり、結果として裁判において解雇が認められないこともあります。もし裁判で解雇が無効となると、会社が1000~2000万円の支払を命じられる場合もあります。安易な解雇は、事業継続に重大なリスクを生じさせます。
そのため、協調性がない問題社員について辞めてもらう必要性があるとしても、解雇以外の選択肢を検討することが大切です。退職勧奨や従業員との話し合いによって退職してもらうことができるかどうかを選択肢として検討すべきです。
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②直感的に判断するのではなく、問題行動の内容や業務への支障の程度を具体的に検討する。
協調性がない問題社員については、経営者からすると、周囲に重大な影響も与えるため、許せないと考えることは当然といえます。
もっとも、解雇の有効性は厳格に判断されるため、解雇を行うかどうか慎重に判断する必要があります。まずは、問題行動の内容や業務の支障の程度を具体的に検討してください。
③解雇以外に選択肢がない場合でも、十分に注意や指導を重ね、改善の見込みがないと判断できる証拠を確保する。
協調性がない問題社員について、どうしても退職に応じず、解雇以外に選択肢がない場合でも、直感的に解雇することは回避すべきといえます。
まずは、十分に注意や指導を重ね、改善の見込みがないと判断できる具体的な証拠を確保すべきです。特に注意や指導に対して反抗的な態度をとる場合、解雇の有効性が認められやすい傾向になるため、記録や証拠(メール、チャット等)をしっかりと残しておくべきです。
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弁護士による問題社員対応について
①雇用契約書・誓約書・就業規則の作成サポート
協調性欠如を理由に解雇を行うためにも、雇用契約書、誓約書や就業規則において、解雇理由や懲戒理由を明確に定めておくことが必要です。 弁護士は、企業(経営者)の立場で、労働条件の整備(雇用契約書・誓約書・就業規則の作成)をサポートします。
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②退職・解雇に向けたアドバイス
弁護士は、会社(経営者)の立場に立って、法的な視点から、退職・解雇に向けて、適切な手続を踏むことができるようにアドバイスを行います。また、会社(経営者)が解雇の判断を行うに際して、リスクの種類や内容を分析し、アドバイスを行います。
弁護士によるサポートによって、適切な手続を行いながら、リスクを踏まえた判断・アクションが可能となります。
③解雇通知書の作成
弁護士は、会社(経営者)の立場に立って、法的な視点から、解雇通知書の作成を行います。特に協調性欠如を理由とする解雇通知書では、具体的な問題行動の内容や業務に与える影響を記載する必要があり、解雇理由を特定する必要があります。また、解雇通知書では、解雇理由や就業規則の根拠条文を具体的に記載する必要があり、労働法を中心とする専門的な知識や経験が必要となります。
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④労働トラブルの窓口対応/代理交渉
問題社員との間で退職・解雇に関し、トラブルとなる場合、ケースによっては、弁護士に窓口対応や代理交渉を依頼することも検討するべきです。
特に、労働者側代理人(弁護士)が就任した場合や労働組合との団体交渉が必要となる場合には、弁護士によるサポートが有効かつ効果的です。
会社(経営者)の意向を尊重しながら、民事裁判等重大なリスクに発展する前に解決できるように最善を尽くします。
⑤協調性の改善に向けた研修サポート
協調性がない社員の中には、問題点を十分に理解できていない社員や知らなかった社員もいます。
そのため、協調性の欠如を事前に予防するため、また、再発を防止するためには、コンプライアンス研修やハラスメント研修が有効な手段となります。
これらの研修は、CSR(企業の社会的責任)活動の一環ともいえ、コンプライアンスが強く求められる現代社会において、多くの企業が取り組んでいますし、その取り組みを社内外にアピールすることで、企業イメージを向上できます。コンプライアンス研修やハラスメント研修は、弁護士に依頼できますので、是非、ご相談ください。
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問題社員対応については弁護士にご相談を
弁護士への相談例:
①解雇通知書の作成方法がわからない。
②解雇したいが、どのような手続を踏んだらいいかわからない。
③協調性欠如を理由に解雇を行ったが、解雇が無効であると主張されている。
④問題社員が労働組合を立ち上げ、団体交渉を要求している。
弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。
顧問契約では、問題社員対応、未払い賃金対応、ハラスメント対応、団体交渉・労働組合対応、労働紛争(解雇、残業代、ハラスメント等)等の労働問題対応を行います。
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Last Updated on 2024年7月31日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔 この記事の監修者 弁護士法人かける法律事務所 弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添い、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、日々挑戦し、具体的かつ実践的な解決プランを提案することで、お客様から選ばれるリーガルサービスを提供し、お客様の持続可能な成長に向けて貢献します。 私は、日本で最も歴史のある渉外法律事務所(東京)で企業法務(紛争・訴訟、人事・労務、インターネット問題、著作権・商標権、パテントプール、独占禁止法・下請法、M&A、コンプライアンス)を中心に、弁護士として多様な経験を積んできました。その後、地元・関西に戻り、関西の企業をサポートすることによって、活気が満ち溢れる社会を作っていきたいという思いから、2016年、かける法律事務所(大阪・北浜)を設立しました。弁護士として15年の経験を踏まえ、また、かける法律事務所も6年目を迎え、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、関西の企業・経営者の立場に立って、社会の変化に対応し、お客様に価値のあるリーガルサービスの提供を目指します。
代表弁護士 細井大輔
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