よくある相談
①部下からパワーハラスメントと指摘されましたが、指導の一環と考えています。
②部下からパワハラ被害に関する相談を受けたので、注意点を知りたい。
③管理職としてパワハラ相談への対応方法について理解したい。
▼部下からのハラスメントとは?▼
逆パワハラとは?ハラハラとは?部下による上司に対するハラスメント行為への企業側の対応を弁護士が解説!
パワーハラスメントとは?
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものをいいます。
パワハラには、ア)身体的な攻撃、イ)精神的な攻撃、ウ)人間関係からの切り離し、エ)過大な要求、オ)過小な要求、カ)個の侵害という類型があるといわれています。
ただ、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる業務指示や指導について、パワハラには該当しないことについては、注意する必要があります。
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パワハラの具体例
・殴打、足蹴りを行う。
・相手に物を投げつける。
・人格を否定するような言動を行う。
・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う。
・他の労働者の前で、大声で威圧的な叱責を繰り返し行う。
・新入社員に必要な教育を行わないまま、到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し、厳しく叱責する。
管理職にパワハラ対応が求められる理由
パワハラは、被害者本人だけでなく、職場全体の雰囲気や組織の信頼性にも深刻な影響を与えます。特に管理職は、現場の最前線に立つ立場として、パワハラの兆候を早期に察知し、適切に対応する責務があります。労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)でも、企業にはパワハラ防止措置が義務づけられており、管理職の対応が不適切であれば、会社全体の法的リスクにもつながりかねません。
また、被害者が会社に相談したにもかかわらず、対応が不十分だった場合には、使用者責任や安全配慮義務違反を問われ、損害賠償請求の対象になる可能性もあります。
さらに、管理職自身が加害者とみなされるケースも少なくなく、日頃の言動や指導の仕方にも注意が求められます。
適切なパワハラ対応は、組織の健全性を保つうえで不可欠であり、管理職にとっては「組織を守る」「自分を守る」ためにも重要な役割といえるのです。
管理職が直面するパワハラ対応の2種類のケース
パワハラ防止が企業に義務づけられている今、職場でのハラスメントにどう対応するかは、管理職にとって非常に重要な課題です。特に相談対応の場面では、「誰が、どのような立場で」関わっているのかにより、管理職のとるべき行動が大きく変わってきます。
例えば、①自分自身がハラスメントの加害者として指摘を受けた場合と、②部下や同僚など第三者の行為について相談を受けた場合では、対応の手順も、求められる判断力も異なります。前者では冷静な自己評価と適切な対応が、後者では迅速な事実確認と公正な対応が求められます。
しかし現実には、「どうすればいいのか分からない」「どこまでがパワハラなのか判断がつかない」と悩む管理職も少なくありません。本コラムでは、①と②の場面それぞれにおいて管理職が取るべき対応のポイントを、法的な視点を交えて解説します。
①自分自身がハラスメントの加害者として指摘を受けた場合
職場でのパワハラ防止意識が高まる中、「自分が加害者として指摘を受ける」という場面は、管理職であっても起こり得ます。突然の指摘に戸惑いやショックを受けるのは当然ですが、ここでの対応を誤ると、状況が悪化したり、法的責任を問われたりするおそれがあります。
まず重要なのは、指摘した本人(申告者)に対して、直接連絡を取ったり、面談を求めたりすることは避ける必要があります。「誤解ではないか」「説明したい」という気持ちがあっても、本人に直接接触することは、プレッシャーや精神的な負担を与えかねず、セカンドハラスメント(二次被害)と評価されるリスクがあります。
また、指摘を受けた際には、感情的にならず冷静に対応することが求められます。報復的な言動、周囲への悪口・無視といった行動は避けましょう。ハラスメント問題では、たとえ自分には悪意がなかったとしても、受け手がどう感じたかが重要になります。
その上で、会社が行うヒアリングや調査には誠実に協力し、自らの言動を振り返る姿勢を持つことが大切です。必要に応じて、専門家の助言を受けながら、行動や言葉遣いを見直す機会と捉えることもできます。
パワハラと指摘されたときこそ、管理職としての真価が問われる場面です。事実関係の解明は会社が行いますが、自身の対応によって、信頼を回復する道も開かれます。
②部下や同僚など第三者の行為について相談を受けた場合
部下や同僚から「○○さんの言動がパワハラではないか」といった相談を受けたとき、管理職としての初期対応は重要です。この段階での対応を誤ると、被害者・加害者双方にとって深刻な結果を招く可能性があります。
まず大切なのは、感情的な判断を避けることです。相談者の話を真剣に受け止めつつも、冷静な態度を保つことが求められます。そして、「この人がそんなことをするはずがない」「あの人ならやりかねない」などの先入観や予断は厳禁です。事実関係の確認前に印象だけで判断することは、適切な対応を妨げる要因になります。
対応は一人で抱え込まず、社内のルールに基づいて複数人で進めるのが原則です。人事部やコンプライアンス部門と連携し、必要があれば記録を残しながら客観的に対処する体制を整えることが望まれます。
また、対応が難しいケースや判断に迷う場合は、外部の専門家(弁護士など)に意見を求めることも有効です。法律的な視点を取り入れることで、会社としての対応の妥当性やリスクを適切に評価することができます。
パワハラ相談への初期対応には、公平性・客観性・冷静さが欠かせません。管理職として「正しく向き合う姿勢」が、職場の信頼を守る第一歩となるのです。
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弁護士に依頼できるパワハラ対策とは?
パワーハラスメントに関する対応は、「起きてから」ではなく「起きる前」「起きたとき」「紛争化したとき」と、段階ごとに適切な措置を講じることが重要です。弁護士は、パワハラに関する社内体制の整備から、トラブル発生時の対応、さらには労働審判・裁判まで、各段階で企業を法的にサポートすることができます。以下に、弁護士が提供できる支援をフェーズごとにご紹介します。
弁護士によるパワハラ予防策の対応
パワハラ防止は、まず社内体制の整備から始まります。弁護士は、以下のような予防的対策を支援できます。
- ・パワハラ防止方針や社内規程(就業規則・懲戒規程等)の整備・見直し
- ・従業員全体や管理職向けのハラスメント研修の実施(講師として対応)
- ・社内におけるハラスメント相談体制の設計や運用ルールの策定支援
これらの施策は、パワハラの「未然防止」だけでなく、いざという時に「会社として適切な対応をしていた」と示すための証拠にもなります。
▼パワハラに関する懲戒処分対応▼
パワハラへの懲戒処分~トラブル回避のための実務対応を弁護士が解説~
弁護士によるパワハラ発生時のサポート
実際にパワハラの疑いがある行為があった場合、初動対応を誤ると法的リスクが一気に高まります。弁護士は、以下のような形で企業をサポートします。
- ・行為がパワハラに該当するかどうかの法的見解の提示
- ・初期対応(関係者の分離、聴取の順序など)に関する助言
- ・ヒアリング調査の進め方、記録の取り方、懲戒委員会の運営支援
社内対応の公平性と客観性を担保するためにも、外部の専門家の関与は有効です。
弁護士によるパワハラ紛争のサポート
パワハラの事案がエスカレートし、懲戒処分・解雇・退職・訴訟などに発展した場合、企業は法的手続きへの対応が求められます。弁護士は次のような支援を提供します。
- ・解雇通知書や懲戒処分通知書などの法的書面の作成
- ・従業員本人または代理人弁護士との交渉、窓口対応の代行
- ・労働審判や民事訴訟における代理人としての活動
企業としてのスタンスを法的に正しく示し、不要な損害やレピュテーションリスクを防ぐことにつながります。
パワハラ(パワーハラスメント)対応については、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください。
弁護士法人かける法律事務所では、企業法務に精通した弁護士が、日々多様な労働問題に対応しています。問題社員対応や未払い賃金の請求、懲戒処分やハラスメントへの対応、団体交渉・労働組合対応、さらに労働審判や裁判まで、実務に即したサポートをご提供しています。
「社内でどう対応すべきか分からない」「判断に迷っている」といったご相談も大歓迎です。まずは一度、法律相談にお越しください。貴社の状況を丁寧にお伺いし、必要な対応や顧問契約の内容について、分かりやすくご説明いたします。
労務トラブルを未然に防ぎ、安心して経営に集中していただくために。私たちが全力でサポートいたします。
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ハラスメント対応について弁護士が解説
Last Updated on 2025年4月2日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔 この記事の監修者 弁護士法人かける法律事務所 弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添い、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、日々挑戦し、具体的かつ実践的な解決プランを提案することで、お客様から選ばれるリーガルサービスを提供し、お客様の持続可能な成長に向けて貢献します。 私は、日本で最も歴史のある渉外法律事務所(東京)で企業法務(紛争・訴訟、人事・労務、インターネット問題、著作権・商標権、パテントプール、独占禁止法・下請法、M&A、コンプライアンス)を中心に、弁護士として多様な経験を積んできました。その後、地元・関西に戻り、関西の企業をサポートすることによって、活気が満ち溢れる社会を作っていきたいという思いから、2016年、かける法律事務所(大阪・北浜)を設立しました。弁護士として15年の経験を踏まえ、また、かける法律事務所も6年目を迎え、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、関西の企業・経営者の立場に立って、社会の変化に対応し、お客様に価値のあるリーガルサービスの提供を目指します。
代表弁護士 細井大輔
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