ハラスメントの種類・具体例・注意点について、企業側の注意点を交えて弁護士が解説します

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ハラスメントの種類・具体例・注意点について、企業側の注意点を交えて弁護士が解説します

ハラスメントに関してよくある相談

①従業員からハラスメントの被害申告がありました。

②ハラスメント行為に対する懲戒処分について悩んでいます。

③ハラスメント予防研修を開催したいと考えています。

ハラスメントとは?

このコラムでは、ハラスメントについて、特定の価値観や優越的な関係に従い、一方的な言動による嫌がらせ行為によって、相手に不快感を与え、トラブルを発生させることと定義します。

企業で問題となるハラスメントの特徴・共通点

①特定の価値観

②優越的な関係

③一方的な言動

④相手方への不快感

ハラスメントによる弊害やリスク

1 従業員個人(被害者)に与える影響

①従業員の健康状態の悪化

②勤務意欲の低下

③休職や退職のリスク

2 職場に与える影響

①就業環境の悪化

②職場全体の生産性の低下

③採用・教育の労力の増大

3 組織(会社)に与える影響

①紛争・訴訟リスク

②レピュテーション・信用の低下のリスク

③採用・教育コストの増大

ハラスメント対応が難しい理由ーハラスメント予防の注意点

ハラスメントは、相手方に不快感を感じさせる行為で、労働トラブルに発展する危険性やリスクを含んでいるため、もちろん予防することは大切です。もっとも、ハラスメント行為の特殊性からハラスメント対応の難しさもあります。

まず、ハラスメント行為者が、ハラスメント行為が問題であるとか、不適切であることを自覚していないことがあり、ハラスメントを事前に防ぐことが難しいことがあります。つまり、ハラスメント行為者の無自覚によって、ハラスメントが発生してしまうことがあります。例えば、セクハラは、無自覚な場合に起こりやすいハラスメントの類型であり、「男らしい」、「女らしい」という固定的な性別役割分担意識がある場合に、より注意が必要になります。

また、ハラスメントの被害申告は相手方が不快に感じるかどうかという主観的な判断で行われることがあります。ハラスメント行為者が問題ないとか、適切であると考えていたとしても、相手方が主観的に不快に感じる場合、ハラスメント問題が発生することがあります。

さらに、どのような行為がハラスメントに該当するかどうか、また、ハラスメントの種類・内容についても、時代や社会の変化によって変わります。例えば、20年前や30年前であれば、社会的に許されていた行為でも、現代社会では、ハラスメントとして許されない行為と評価されることもあります。そのため、ハラスメントを予防するためには、時代や社会の変化を意識する必要があります。

また、ハラスメントについては、加害者となり得る場合も被害者となり得る場合もあります。すべての人が加害者にも、被害者にもなり得るということを理解しておくことも大切です。

このようにハラスメントを予防していくためには、自分の価値基準だけで判断せず、相手方の立場で、また、時代や社会の変化を理解した上で対応していく必要があります。

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ハラスメントの種類や内容

ハラスメントの種類や内容には、様々なものがありますが、代表的なものについて説明します。

①パワーハラスメント(パワハラ)

②セクシュアルハラスメント(セクハラ)

③妊娠・出産・育児休業等ハラスメント(マタハラ等)

④カスタマーハラスメント(カスハラ)

⑤アルコールハラスメント(アルハラ)

①パワーハラスメント(パワハラ)とは?

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものをいいます。

パワハラには、ア)身体的な攻撃、イ)精神的な攻撃、ウ)人間関係からの切り離し、エ)過大な要求、オ)過小な要求、カ)個の侵害という類型があるといわれています。

ただ、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる業務指示や指導について、パワハラには該当しないことについては、注意する必要があります。

パワハラの具体例

・殴打、足蹴りを行う。

・相手に物を投げつける。

・人格を否定するような言動を行う。

・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う。

・他の労働者の前で、大声で威圧的な叱責を繰り返し行う。

・新入社員に必要な教育を行わないまま、到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し、厳しく叱責する。

パワハラの注意点

・業務上必要かつ相当な範囲で行われる業務指示や指導はパワハラとはいえず、特に生命や身体に重大なリスクが伴うミス・言動に対して強く注意や指導が必要な場合もあります。

・注意・指導とパワハラの境界線を意識する必要があります。

・身体的な攻撃(殴打、足蹴り、肩をたたく)や侮辱的な発言(給料泥棒、会社にとって役に立たない存在だ、馬鹿な奴だ)はパワハラと認定される可能性が高いといえます。

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②セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは?

 職場のセクシュアルハラスメントとは、「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。

セクハラ(性的な言動)の具体例

・性的な事実関係を尋ねること

・性的な内容の情報(うわさ)を流すこと

・性的な冗談やからかい

・食事やデートへの執拗な誘い

・必要なく身体に触れること

企業の労務トラブルは使用者側に特化した大阪の弁護士にご相談ください

セクハラの注意点

・会社・上司・同僚だけでなく、取引先や顧客との関係でも問題になります。

・異性だけでなく、同性に対する言動でも問題になり、また、男性に対する言動でも問題になります。

・無自覚な場合に起こりやすいハラスメントの類型であり、「男らしい」、「女らしい」という固定的な性別役割分担意識(*)がある場合、特に注意深く行動する必要があります。

*性別役割分担意識=「男性は外で働き、女性は家庭を守るべきである」等

③妊娠・出産・育児休業等ハラスメントとは?

 妊娠・出産・育児休業等ハラスメントとは、「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることをいいます。

マタニティハラスメント(マタハラ)、パタニティハラスメント(パタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ)と言われることもあります。

妊娠・出産・育児休業等ハラスメントの具体例

・産前休業の取得を上司に相談したところ、「休みをとるならやめてもらう」と言われた。

・残業の免除を上司に相談したところ、「次の査定では昇進がないと思うよ」と言われた。

・育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」と言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている。

妊娠・出産・育児休業等ハラスメントの注意点

・妊娠・出産したこと、育児や介護のための制度を利用したこと等を理由として、会社が行う解雇、減給、降格、不利益な配置転換、契約を更新しない(契約社員の場合)といった行為は、「ハラスメント」ではなく、「不利益取扱い」となり、法律上、禁止されています。

・企業は、パワハラやセクハラだけでなく、マタハラ等についても、予防するための適切な措置を講じる必要があります。

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④カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?

カスタマーハラスメントとは、顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様によって、労働者の就業環境が害されるものをいいます。

東京都でカスハラ条例が制定されており、企業も、従業員の安全を確保するためにも、カスタマーハラスメント対策について検討していかなければなりません。

カスハラの具体例

・商品に問題がないにもかかわらず、欠陥があると主張し、謝罪ややり直しを求める。

・サービスにミスがあったが、土下座を要求したり、業務を妨害する旨の脅しがあった。

・毎日、執拗に電話したり、訪問して、長時間にわたるクレームを行う。

・クレームに際して、殴る、蹴るといった暴行を加える。

・商品の返品に加えて、金銭要求を行い、金銭要求に応じないと、SNSで拡散すると脅す。

・従業員が応じられないと回答すると、大声で叫び、従業員を罵倒する。

⑤アルコールハラスメント(アルハラ)とは?

 職場におけるアルコールハラスメントとは、会合の盛り上がりや上下関係による心理的な飲酒の強要や飲酒による暴言・暴力・セクハラをいいます。

アルコールハラスメントは、若者の急性アルコール中毒死の背景といわれたり、職場環境のトラブルの原因ともなっています。

上司・部下や同僚との間でお酒を飲むこと自体を否定するわけではないですが、トラブルの原因となることや、お酒の飲み方については十分に注意する必要があります。お酒の席・場であるから、許されるわけではないことについて、再度確認しておく必要があります。

アルハラの具体例

・飲酒の強要

・意図的にお酒を飲ませて、酔わせること

・お酒に起因した暴力、暴言やセクハラ

・お酒に起因した迷惑行為

弁護士によるハラスメント対応

①ハラスメント予防研修の開催

ハラスメントを行ってしまった社員の中には、問題点を十分に理解できていない社員や知らなかった社員もいます。

そのため、ハラスメントを事前に予防するため、また、再発を防止するためには、コンプライアンス研修やハラスメント予防研修が有効な手段となります。

これらの研修は、CSR(企業の社会的責任)活動の一環ともいえ、コンプライアンスが強く求められる現代社会において、多くの企業が取り組んでいます。また、その取り組みを社内外にアピールすることで、企業イメージを向上できます。コンプライアンス研修やハラスメント研修は、弁護士に依頼できますので、是非、ご相談ください。

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②ハラスメント申告時の対応

ハラスメント被害の申告があった場合、ハラスメントに対する事実調査も必要であり、ハラスメントを行う社員や被害者・関係者へのヒアリングも必要となります。このヒアリングを通して、ハラスメントを行う社員の意識も変化し、再発防止策につながることもあります。弁護士は、ハラスメント申告時の対応についてサポートします。

③ハラスメントに対する懲戒処分の対応

弁護士は、会社(経営者)の立場に立って、法的な視点から、懲戒処分に向けて適切な手続を踏むことができるようにアドバイスを行います。また、会社(経営者)が懲戒処分の判断を行うに際して、リスクの種類や内容を分析し、アドバイスを行います。

特に、ハラスメントを理由とする懲戒処分を行う場合、事実関係の確定や事後的な紛争に備えた証拠の確保も必要であり、関係者へのヒアリングや懲戒処分委員会への立会も含めて、弁護士はサポートできます。

弁護士によるサポートによって、適切な手続を行いながら、リスクを踏まえた判断・アクションが可能となります。

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労働トラブルの窓口対応/代理交渉

対象従業員との間で懲戒処分の有無や内容を含めてトラブルとなる場合、ケースによっては、弁護士に窓口対応や代理交渉を依頼することも検討するべきです。

特に、労働者側代理人(弁護士)が就任した場合や労働組合との団体交渉が必要となる場合には、弁護士によるサポートが有効かつ効果的です。

会社(経営者)の意向を尊重しながら、民事裁判等重大なリスクに発展する前に解決できるように最善を尽くします。

ハラスメント対応については、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください

弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

顧問契約では 問題社員(モンスター社員)対応、未払い賃金対応、懲戒処分対応、ハラスメント対応、団体交渉・労働組合対応、労働紛争対応(解雇・雇止め、残業代、ハラスメント等)、労働審判・労働裁判対応、雇用契約書・就業規則対応、知財労務・情報漏洩、等の労働問題対応を行います。

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Last Updated on 2024年10月17日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔

この記事の監修者

弁護士法人かける法律事務所 
代表弁護士 細井大輔

弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添い、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、日々挑戦し、具体的かつ実践的な解決プランを提案することで、お客様から選ばれるリーガルサービスを提供し、お客様の持続可能な成長に向けて貢献します。

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