雇用契約書(労働契約書)の作成のメリットとは?作成方法について弁護士が解説

  • 就業規則対応
労働契約書を作成するメリット

労働契約(雇用契約)とは

 労働契約法6条では、労働契約を「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」とされています。

▼関連記事はこちらから▼

雇用契約とは?~労務提供義務、誠実労働義務、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務~会社(経営者)の視点から従業員の義務について弁護士が解説

雇用契約書の重要性とは?業種ごとの違いについても弁護士が解説します。

雇用契約書(労働契約書)の作成のメリットとは?作成方法について弁護士が解説

労働契約(雇用契約)の特徴

①労働者と使用者との間の合意であること

②労働者が使用者の指揮命令に従って労務を提供する義務を負うこと

③使用者が労務提供に対する対価として賃金を支払うこと

労働契約書(雇用契約書)を作成する法的な義務があるか?

 労働契約は、口頭で成立するとされており、労働契約書の作成は必ずしも必須とされていません。これを、「諾成契約」といいます。

 もっとも、労働基準法15条1項では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」とされており、使用者に対して労働条件の明示義務を定めています。この労働条件の明示義務を遵守するため、実務的には、労働条件通知書が作成され、労働者に対して交付されることが一般的です。

 このように実務的には、労働契約書(雇用契約書)を作成せず、労働条件通知書のみを作成する使用者(企業)も多いのではないでしょうか。

労働条件通知書では不十分?

 法的には、労働契約書(雇用契約書)を作成する法的義務はなく、労働条件通知書でも足りるという考え方も、もちろんあります。

 もっとも、労働条件通知書では、労働者から労働条件通知書を受け取っていないと言われたり、一方的に労働条件を不利に変更されたと言われ、事後的にトラブル・紛争になることもあります。

 つまり、労働条件通知書では、労働者側が企業が通知する労働条件を受諾したか(同意したか)どうか不明となることもあります。

 そのため、労働条件通知書を作成していれば、企業(使用者)としては、必ずしも問題ないとはいえず、労働契約書(雇用契約書)の作成を検討する必要があります。

▼雇用契約書の雛形のDLはこちらから▼

労働問題に関する契約書・誓約書書式一覧

▼関連記事はこちらから▼

【コラム】労働契約(雇用契約)の締結に際して必要となる労働条件の明示義務等を弁護士が解説します~2024年4月1日から労働条件の明示・説明・求人情報ルールが変更(改正)されます~

労働契約書(雇用契約書)を作成するメリット

 労働契約書(雇用契約書)は、法的に作成が義務づけられるものではないですが、労働トラブルや紛争を未然に回避し、労働者(従業員)が安心して業務に専念し、会社全体の生産性向上に貢献できるというメリットもあります。

メリットー労働者(従業員)の同意(合意)が明確になること

 労働条件通知書では、事後的に労働条件通知書を受け取っていないとか、変更した労働条件の内容を同意(合意)していないというリスクがあります。このようなリスクを回避するためにも、労働契約書(雇用契約書)を作成するメリットがあります。

 労働契約法4条2項でも、「労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。」とされており、労働契約書(雇用契約書)の作成を推奨しています。

メリットー労働者(従業員)に安心を提供すること

 労働条件通知書と異なり、労働契約書(雇用契約書)の作成は、手間や費用が必要となりますが、労働条件の内容を確認しながら、合意形成に至るため、労働者に安心を提供する材料となります。

 その結果、労働者は、より意欲的に業務を行い、業務に専念することが可能となります。結果として、業務の成果につながり、会社のビジョンや業績に貢献することができるようになります。

メリットー労働者(従業員)の満足度が向上し、パフォーマンスの向上が期待できること

 労働契約書(雇用契約書)の作成は、労働者と使用者との協議に基づきながら、合意形成するため、労働条件通知書に基づく一方的な通知と異なり、労働者の満足度が向上し、更なるパフォーマンスの向上が期待できます。

▼雇用契約書の雛形のDLはこちらから▼

労働問題に関する契約書・誓約書書式一覧

労働契約書(雇用契約書)の作成に際する注意点

 労働契約書(雇用契約書)を作成するに際しては、以下の点に注意する必要があります。

注意点 労働法に違反しないこと

 労働契約(雇用契約)も契約(合意)であるため、原則として、使用者と労働者との間で自由に、その内容を決めることができます。

 もっとも、実際は、労働契約(雇用契約)において、使用者と労働者との間で交渉力を含めて格差があり、労働者を保護するために、労働契約(雇用契約)に関連する法律によって一部規制を受けます。労働基準法13条でも、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」とされており、労働基準法に違反する労働条件を合意することはできません。

 そのため、労働契約書(雇用契約書)を作成するに際しては、労働法に違反又は矛盾しないように注意しなければなりません。

労働契約(雇用契約)に関連する法律:

①民法

②労働基準法(労基法)

③労働契約法(労契法)

④労働組合法(労組法)

企業の労務トラブルは使用者側に特化した大阪の弁護士にご相談ください

⑤雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(均等法)

⑥最低賃金法

*一般的に労働法と総称されることがありますが、労働法という名称の法律があるわけではありません。

注意点 就業規則と矛盾しないこと

 労働契約法12条では、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」とされており、就業規則に違反する労働条件を合意することができないとされています。

 そのため、労働契約書(雇用契約書)を作成するに際しては、就業規則に違反又は矛盾しないように注意しなければなりません。

注意点 労働条件を変更するに際して、原則として労働者の同意が必要となること

 労働契約法3条1項では、「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする」とされ、労働契約法8条では、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」とされており、労働条件を変更するに際して、原則として、労働者(従業員)の同意が必要となります。

 労働契約書(雇用契約書)を作成するに際しては、労働者(従業員)から同意を得ることができるかどうかという視点も必要となります。

▼雇用契約書の雛形のDLはこちらから▼

労働問題に関する契約書・誓約書書式一覧

▼関連記事はこちらから▼

契約社員の雇止めは無効になる場合も?雇止め法理を弁護士が解説

36協定について弁護士が解説!働き方改革関連法を押さえる!

弁護士による労働契約書(雇用契約書)に関連するサポート

 弁護士は、労働契約(雇用契約)において、以下のサポートが可能です。労働法や紛争・訴訟対応に精通している弁護士だからこそ、できることが多くあります。

①求職情報のチェック

②労働条件通知書や労働契約書(雇用契約書)の作成・変更サポート

③就業規則や給与規定の作成・変更サポート

④従業員(労働者)又はその代理人(弁護士)との交渉・窓口対応

⑤労使交渉や労働組合との交渉におけるサポート

⑥労働裁判の代理人対応

就業規則の作成・チェックについて弁護士が解説

雇用契約(労働契約)については弁護士にご相談を

弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

顧問契約では、問題社員対応、未払い賃金対応、ハラスメント対応、団体交渉・労働組合対応、労働紛争(解雇、残業代、ハラスメント等)等の労働問題対応を行います。

ハラスメント研修も引き受けていますので、是非一度お問い合わせください。

▼雇用契約書の雛形のDLはこちらから▼

労働問題に関する契約書・誓約書書式一覧

▼関連記事はこちらから▼

残業代の請求時の労働時間の把握方法・企業の反論方法とは?弁護士が解説します。

問題社員(モンスター社員)への注意・指導方法とは?注意・指導方法(指導書・改善命令書)における注意点を弁護士が解説します!



労務問題に関する解決実績バナー



Last Updated on 2024年10月30日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔

この記事の監修者

弁護士法人かける法律事務所 
代表弁護士 細井大輔

弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添い、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、日々挑戦し、具体的かつ実践的な解決プランを提案することで、お客様から選ばれるリーガルサービスを提供し、お客様の持続可能な成長に向けて貢献します。

関連記事はこちら

法律相談のご予約はお電話で TEL:06-7777-3205 電話受付 平日9時30分~17時30分 法律相談のご予約はお電話で TEL:06-7777-3205 電話受付 平日9時30分~17時30分

メールでのご相談予約はこちら

  • 事務所概要・アクセス事務所概要・アクセス
  • 企業経営に役立つ労働コラム登録企業経営に役立つ労働コラム登録
  • お問い合わせお問い合わせ
  • 顧問契約をご検討の方