
競業避止義務
に関する問題は弁護士にご相談ください。
競業避止義務についてよくある相談例
- 競業避止義務違反が発生しないように予防策を検討したい。
- 従業員が集団で退職し、競業事業を開始した。
- 退職した従業員が、取引先に対して、会社の誹謗中傷をしている。
競業避止義務対応とは?
競業避止義務対応とは、①競業避止義務違反を未然に予防するための対応(予防策)と②実際に競業避止義務違反が発生した場合、違反行為に対して責任を追及するための対応(責任追及策)を意味します。
①予防策や②責任追及策の具体的な内容は、以下のとおりです。
1.競業避止義務に関する予防策
- 雇用契約書や就業規則の整備
- 誓約書の整備
- コンプライアンス研修
- 営業秘密管理
2.競業避止義務に関する責任追及策
- 損害賠償請求
- 差止請求
- 民事訴訟
- 刑事告訴(不正競争防止法違反がある場合)
競業避止義務とは?
競業避止義務とは、自己又は他人を介して、会社と競合する事業を行ってはならないという義務です。競業会社へ転職する行為や競業会社を設立する行為が義務違反の対象行為となります。
日本の法律では、従業員は在職中、会社の利益を著しく侵害する競業行為を差し控える義務があって、在職中は競業避止義務が認められます。
これに対して、退職後は、従業員にも職業選択の自由や営業の自由が保障されており、当然に競業避止義務が発生するものではなく、特別な合意が必要となります。競業避止義務違反の予防策を適切にとっておかないと、退職後の従業員に対して競業避止義務違反について責任追及できません。
そのため、会社が従業員に対して退職後の競業避止義務を求めるためには、就業規則や誓約書(入社時又は退職時)において、特別に定めておく必要があります。
競業避止義務違反の具体例
- 競業会社に転職すること
- 競業会社の役員に就任すること
- 競業会社を設立すること
企業・事業者にとっての競業避止義務対応の重要性
競業避止義務違反によって、会社の取引先が奪われたり、会社の従業員が引き抜かれたり、会社の経営や売上に与える影響は甚大です。
特に、取引先が奪われると、売上の減少に直結しますし、会社の従業員が引き抜かれると、多大なコスト(採用コストや教育コスト等)が発生し、目に見えた損失が発生します。
しかも、競業避止義務違反が発生している状況において、同時に、会社を誹謗中傷する行為や会社の重要な情報が漏洩し、利用されることもあって、会社の信用の低下とともに、会社が長年にわたって蓄積した無形資産(秘密情報)が他社に模倣され、競争優位性を確保することができなくなる自体も生じてしまいます。
会社や事業が持続的に成長し続けるためには、競業避止義務対応は重要です。
競業避止義務対応に関するよくある相談内容
1.競業避止義務の範囲ー競業避止義務は有効ですか?
退職後の競業避止義務は、従業員の職業選択の自由や営業の自由との関係から、全く無制限に認められるわけでありません。
つまり、1)守るべき会社の利益の有無及び内容、2)従業員の地位や役職、3)地域的な限定の有無及び内容、4)競業避止義務の存続期間、5)禁止される競業行為の範囲、6)代償措置の有無及び内容等を総合的に考慮して、合理的な範囲内でしか認められません。
仮に、就業規則や誓約書で競業避止義務を規定するとしても、合理的な範囲を超えて、過剰に制約してしまうと、競業避止義務が無効となってしまうこともあります。
競業避止義務を規定するとしても、会社や事業の性質や従業員の地位等を考慮して、個別具体的に検討する必要があります。
競業避止義務が合理的な範囲となっているか、また、競業避止義務を規定する上での注意点については、弁護士に相談できます。
2.誓約書の作成ー就業規則に規定するだけで十分ですか?
就業規則に競業避止義務を規定していれば、一定の効果もあります。もっとも、就業規則に規定しているだけでは、従業員が競業避止義務を理解していない可能性があること、また、就業規則の周知手続等が不十分な場合、競業避止義務の有効性が争われてしまうことがあります。
そのため、競業避止義務の実効性を担保するためには、競業避止義務に関する誓約書を取得しておくべきです。この誓約書の取得に際しては、秘密情報の取扱い方法や従業員の引抜の禁止等の条項も規定し、競業避止義務以外の条項も検討すべきです。
競業避止義務対応について、就業規則に加えて、誓約書の取得も検討してください。
3.競業避止義務対応のタイミングーすぐに対応すべきですか?
競業避止義務対応の予防策について、「うちの従業員は信頼しているから、大丈夫」、「独立なんてリスクがあって、そんな従業員はいない」と思われる経営者の方もいますし、従業員を信頼・信用することは大切です。
もっとも、価値観が多様化する現代社会において、従業員の中には、大きな不満もない中で、ある日突然、退職し、競業事業を開始したり、周到に計画をたてて、従業員や取引先を大量に奪って、会社に甚大な損害を与えることについて躊躇しない方がいることも事実です。
また、競業避止義務の予防策において、退職することが決まった時点で誓約書をもらえばいいと考えており、退職時に誓約書の提出を求めたところ、拒否されるケースもあります。
そして、競業避止義務違反の責任追及策でも、相手方の事業が軌道に乗って、安定した後では、相手方も競業避止義務違反に対する責任追及について協議に応じることを拒否し、話し合いによってまとまらないこともあります。競業避止義務違反による会社の損害を最小化するためにも、早期に決断すべきです。
競業避止義務違反によって会社が甚大な損害を受け、相手方と十分に戦える余力がなくなった後では、手遅れといえます。
会社側の競業避止義務対応の3つのポイント
1.退職時ではなく、入社時の対応が必要なこと
経営者の方の中には、退職時に誓約書の提出を求めれば、十分と考える方もいます。もっとも、日本の法律としては、退職従業員には、退職時に誓約書を提出すべき法律上の義務はありません。
そのため、意図的に、競業避止義務違反を行う退職従業員の中には、退職時に誓約書の提出を求めても、拒否されてしまうことがあります。
退職時では競業避止義務違反の予防策として不十分で、競業避止義務の抑止力や実行力を担保するためには、入社時又はプロジェクト参加時に誓約書の提出を求めるべきです。
2.競業避止義務だけでなく、営業秘密の対策も必要となること
競業避止義務違反だけでは、退職従業員の営業の自由や職業選択の自由の観点から無制約に認められるものではなく、その違反に対する対応としても、多くの場合、損害賠償(金銭的な支払)に限定されてしまいます。
競業避止義務違反だけでは、十分な抑止力とならず、競業行為の禁止を求める上では実効性に欠けてしまう部分があります。
そのため、競業避止義務違反の責任追及策を検討する上では、競業避止義務違反以外の違反行為、例えば、営業秘密の侵害行為、引抜禁止行為、在職中の違反行為(職務専念義務違反や誠実労働義務違反)等を検討することも効果的です。
営業秘密の侵害行為は、損害賠償請求に加えて、差止請求や刑事罰による抑止力も期待することができるため、営業秘密の管理を徹底した上で、営業秘密の持ち出しや漏洩がないか等を検討してください。
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3.損害賠償請求(金銭請求)だけでは十分な抑止力とならず、他の手段も検討すること
競業避止義務違反に対する対応策として、損害賠償を請求することができますが、損害賠償請求以外にも、以下の手段も検討できます。
特に、競業避止義務違反だけではなく、営業秘密の漏洩等が問題となり、特に悪質な事案については、刑事手続(告訴手続)も検討することが可能です。
- 競業行為の差止請求
- 競業行為差止めの仮処分
- 懲戒処分(懲戒解雇を含む。)
- 刑事手続(告訴手続)
弁護士による競業避止義務対応のサポート
1.予防策のサポート内容
従業員による競業避止義務違反を未然に予防し、万が一、競業避止義務違反が発生したときの対応について、労働法・不正競争防止法(営業秘密)や紛争・訴訟対応に精通する弁護士に依頼することができます。
- 競業避止義務条項の有効性の検討
- 雇用契約書や誓約書の整備サポート
- 就業規則の整備サポート
- 社内研修(従業員の義務)の実施
- 秘密情報の管理体制の構築サポート
2.責任追及策のサポート内容
従業員による競業避止義務違反があった場合、会社は、従業員に対して、競業避止義務違反をやめさせ、競業避止義務違反による損害の回復を目指す必要があります。
特に、会社の重要な資産や信用を守るためにも、競業避止義務違反に対して毅然とした対応が求められることがあります。
弁護士は、紛争・訴訟対応や労働法に精通しており、従業員による競業避止義務違反に対して、以下の対応が可能です。
- 従業員に対する内容証明郵便(警告書)の送付
- 従業員との裁判外交渉・和解交渉
- 従業員に対する民事訴訟の提起
- 刑事告訴(不正競争防止法違反がある場合)
- 競業避止義務違反を根拠づける証拠の確保・整理のサポート
競業避止義務違反の対応については、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください
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