従業員による競業避止義務違反の予防の必要性や具体的な予防策をわかりやすく弁護士が解説します

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従業員による競業避止義務違反の予防の必要性や具体的な予防策をわかりやすく弁護士が解説します

よくある相談例

①従業員による競業避止義務違反を未然に防ぎたい。

②競業避止義務違反の効果的な予防策を知りたい。

③就業規則や誓約書に競業避止義務条項を追加したい。

競業避止義務とは?

競業避止義務とは、自己又は他人を介して、会社と競合する事業を行うことを禁止する義務をいいます。

具体的には、

①競業会社の役員に就任する行為

②競業会社へ転職する行為や

③競業会社を設立する行為を禁止する義務

をいいます。競業避止義務違反は、

①M&Aに伴う競業避止義務違反

②取引先による競業避止義務違反(フランチャイズ契約や製造委託契約等)

③役員による競業避止義務違反及び

従業員による競業避止義務違反

が問題となり、各場面において、競業避止義務違反を予防(回避)する方法が必要となります。

本コラムでは、従業員による競業避止義務違反を予防(回避)する必要性や予防策について、詳しく解説します。

競業避止義務違反の予防(回避)の必要性

競業避止義務違反が発生すると・・・

従業員による競業避止義務違反が発生すると、会社が多大な労力・時間・費用をかけて、投資したにもかかわらず、顧客を奪われたり、大事な仕入先・業務提携先が奪われたりすることによって、売上や利益が低下してしまいます。最悪の場合、大量に顧客や取引先が奪われ、事業が継続できないということも想定されます。

しかも、従業員による競業避止義務違反では、競業避止義務違反だけでなく、会社の営業秘密が不正に持ち出され、使用されたり、また、会社の従業員を大量に引き抜くケースもあり、悪質な行為が発生することもあります。

競業避止義務違反を放置していると・・・

競業避止義務違反は、会社の売上や利益に対して損害を与える行為そのものであり、競業避止義務違反を放置していると、会社の成長を大きく阻害します。

また、会社が毅然とした対応をしないと、他の従業員も競業避止義務違反を行い、その損失が拡大してしまうこともあります。

実際、退職した1名の従業員による競業避止義務違反を放置していたところ、次から次に従業員が退職し、会社の顧客や取引先を奪い、最終的には、事業の継続が困難となった事例もあります。この時点では、会社にも競業避止義務違反に対応する余力(労力・時間・費用)が残っておらず、競業避止義務違反に対する対応(差止めや損害賠償請求)も事実上困難になっていることがあります。

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持続的な成長に向けて・・・

会社が持続的に成長していくためには、会社が投下した労力・時間・費用を無駄にせず、会社の利益を守っていく必要があります。会社が蓄積した資産や信頼をしっかりと守るという意識が大切です。

競業避止義務違反は、会社の投資によって獲得した信頼や利益に対して損害を与える行為であり、会社の利益を守るためにも、競業避止義務違反を予防(回避)するための方法(予防策)が必要となります。

競業避止義務違反の予防策

競業避止義務違反を予防するための方法(予防策)は、主に以下のとおりです。

競業避止義務の範囲の検討

②就業規則の整備

③雇用契約書や誓約書(入社時・退社時)の整備

④社内研修(従業員の義務)による周知

⑤秘密情報の管理体制の構築

競業避止義務の範囲の検討

まず、競業避止義務違反を予防するためには、従業員の競業避止義務を導入する必要があります。

もっとも、従業員の競業避止義務は、従業員の職業選択の自由や経済活動の自由を制約するものでもあるため、無制限に認められるわけではなく、競業避止義務を導入するに際して、法的に有効な範囲で導入を検討する必要があります。検討するポイント(要素)は、以下のとおりです。

・守るべき会社の利益の有無及び内容【競業避止の根拠・理由】

・従業員の地位や役職【競業避止の対象者】

・地域的な限定の有無及び内容【地域】

・競業避止義務の存続期間【競業避止の期間】

・禁止される競業行為の範囲【競業避止の内容】

・代償措置の有無及び内容【代償措置】

就業規則の整備

競業避止義務を導入するためには、就業規則において、競業避止義務を規定することになります。

就業規則の作成・届出義務は、「常時十人以上の労働者を使用する使用者」に求められますが(労働基準法89条)、就業規則の作成・届出義務がない会社でも就業規則を任意に作成することは可能です。

小規模の会社であっても、競業避止義務をしっかりと整備したいということであれば、就業規則の作成・届出を検討することになります。

就業規則第●条(競業避止義務)

従業員は在職中及び退職後12か月間、会社と競合する他社に就職及び競合する事業を営むことを禁止する。ただし、会社が従業員と個別に競業避止義務について契約を締結した場合には、当該契約によるものとする。

就業規則のチェックポイント

・在職中のみならず、退職後も競業避止義務を規定しているか?

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・退職後の競業避止義務の期間は限定されているか?

・競業避止義務だけでなく、秘密保持や引抜禁止、誹謗中傷禁止等従業員の禁止行為も規定されているか?

・競業避止義務違反に対する対応策(誓約書の提出、懲戒処分や退職金不支給)も規定されているか?

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雇用契約書や誓約書(入社時・退社時)の整備

競業避止義務を就業規則に規定する必要がありますが、就業規則に規定するだけでなく、雇用契約書や誓約書においても、別途、競業避止義務の内容を記載し、従業員から署名押印を取得しておくべきです。この際、従業員の退職時に競業避止義務に関する誓約書を取得すれば、足りると考える会社もあるかもしれませんが、退職時では、誓約書の取得を拒否する従業員もいます。退職時に誓約書の提出を拒否されると、事実上、誓約書の提出を求めることは困難になります。

そのため、誓約書は必ず入社時に取得し、後回しにしないことが大切です。

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誓約書の具体例

1.   私は、在職中及び貴社を退職後1年間は、以下の行為を行わないことを誓約します。

①   貴社と競合する事業を行う事業者に就職し又はその役員に就任すること

②   貴社と競合する事業を自ら営み又はその設立に関与すること

③   貴社の顧客(取引先や提携先を含みます。)に直接又は間接を問わず、取引を行うこと

2.   私は、前項に違反する行為を行った場合、貴社に対して損害賠償責任を負うことに同意し、異議を述べません。

社内研修(従業員の義務)による教育・周知

競業避止義務違反は、意図的(故意)の場合もありますが、従業員の中には、うっかり(知らずに)違反するケースもあります。つまり、競業避止義務があることを知らなかったり、競業行為に問題ないと考える従業員がいることも事実です。

そのため、社内研修(従業員の義務)を定期的に開催することによって、従業員が負うべき義務の内容を教育し、周知することも、競業避止義務違反の予防策としては有効です。

競業避止義務違反が発生すると、その対応に労力や時間、費用がかかってしまったり、会社が希望する目的が達成できないこともあるため、社内研修によって競業避止義務違反を未然に防止することも大切です。

社内研修によって、従業員の義務内容を定期的に確認することは、労働トラブルを未然に回避し、会社の利益を守るためにも重要な意義があります。

秘密情報の管理体制の構築

競業避止義務違反が発生するケースでは、同時に、営業秘密侵害行為が行われたり、秘密保持義務違反が発生することも多くあります。

そのため、競業避止義務違反を未然に防ぐためには、競業避止義務だけでなく、会社情報を秘密情報として管理し、万が一、競業避止義務違反が発生した場合、不正競争防止法に基づいて営業秘密侵害を理由とする対応準備をしておくことが効果的です。

不正競争防止法違反を理由とする場合、民事手続だけでなく、刑事手続も選択することが可能となり、営業秘密の利用の停止を求めることも容易になります。

秘密情報の管理体制の内容

①従業員との間で秘密保持誓約書を締結する。

②取引先との間で秘密保持契約書を作成する。

③営業秘密管理規定を作成し、周知する。

④営業秘密管理規定に基づく情報管理を徹底する。

弁護士による競業避止義務違反の予防対応

 従業員による競業避止義務違反を未然に予防し、万が一、競業避止義務違反が発生したときの対応について、労働法・不正競争防止法(営業秘密)や紛争・訴訟対応に精通する弁護士が対応可能です。

①競業避止義務条項の有効性の検討

②雇用契約書や誓約書の整備サポート

③就業規則の整備サポート

④社内研修(従業員の義務)の実施

⑤秘密情報の管理体制の構築サポート

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競業避止義務の法的効力や違反行為への対応策について弁護士が解説

競業避止義務違反の予防対応については、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください。

弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

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Last Updated on 2024年4月17日 by roumu-osaka.kakeru-law

この記事の執筆者

弁護士法人かける法律事務所 
代表弁護士 細井大輔

弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添い、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、日々挑戦し、具体的かつ実践的な解決プランを提案することで、お客様から選ばれるリーガルサービスを提供し、お客様の持続可能な成長に向けて貢献します。

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