不正競争防止法(営業秘密・限定提供データの保護の強化)について弁護士が解説します。-令和6(2024)年4月施行-

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不正競争防止法(営業秘密・限定提供データの保護の強化)について弁護士が解説します。令和6(2024)年4月施行・不正競争防止法(営業秘密・限定提供データの保護の強化)について、弁護士が解説します。

不正競争防止法のポイント

①令和5(2023)年改正・不正競争防止法によって営業秘密・限定提供データの保護が強化され、令和6(2024)年4月1日から施行されます。

②いわゆるビッグデータ(限定提供データ)の保護対象が秘密管理されたビッグデータにも拡充されます。

③営業秘密の保護強化の方向で、損害賠償額の算定規定や営業秘密の使用等の推定規定が拡充されます。

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不正競争防止法とは?

 「不正競争防止法」とは、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的」としています(不正競争防止法1条)。

 不正競争防止法では、ブランド表示の盗用や形態模倣等を「不正競争行為」と定めるとともに、営業秘密の不正取得・使用・開示行為等を「不正競争行為」と定めて、禁止しています。不正競争防止法は、不法行為法(民法709条)の特則として、位置付けられます。

令和5年改正・不正競争防止法(施行日:令和6年4月1日)の概要

 知的財産分野におけるデジタル化や国際化の更なる進展などの環境変化を踏まえ、令和5年に不正競争防止法の改正を含む「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が可決成立し、令和6年4月1日から施行されました。

 改正不正競争防止法の概要は、以下のとおりです。

①デジタル空間における模倣行為の防止

営業秘密・限定提供データの保護の強化

③外国公務員贈賄に対する罰則の強化・拡充

④国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化

 このコラムでは、②営業秘密・限定提供データの保護の強化について、解説します。

営業秘密・限定提供データの保護の強化の内容

限定提供データの定義の明確化(不正競争防止法2条7項)

 平成30年改正・不正競争防止法によって、ビッグデータ(限定提供データ)を安心して、他者と共有や利活用できるようにするため、不正取得等に差止請求等の対抗手段を可能とする保護制度(ビッグデータ保護制度)が創設されました。限定提供データの具体例として、A)商品として広く提供されるデータやB)コンソーシアム内で共有されるデータがあります。

 この改正では、秘密管理されていないビッグデータのみを保護対象としており、限定提供データの定義には、「秘密として管理されているものを除く。」と規定していました。

 もっとも、自社で秘密管理しているビッグデータであっても、他社に提供することもあって、この場合、限定提供データとしても、営業秘密としても保護されず、保護に隙間が生じるという問題がありました。

 そのため、令和5年改正・不正競争防止法では、「秘密として管理されているものを除く。」から「営業秘密を除く。」に改正され、保護対象を秘密管理されたビッグデータにも拡充し、営業秘密と一体的な情報管理が可能となりました。

不正競争防止法2条7項

 この法律において「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。次項において同じ。)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(営業秘密を除く。)をいう。

損害賠償額算定規定の拡充(不正競争防止法5条1項)

 不正競争行為に対する損害賠償請求に係る損害額の立証責任は、損害を主張する側(被害者側)にあることが原則です。

 もっとも、営業秘密侵害行為による損害額の立証が非常に困難であることが多く、不正競争防止法では、「侵害品の販売数量×被侵害者の1個当たりの利益」と推定するという規定があります(不正競争防止法5条1項)。

 令和5年改正前は、被侵害者の生産・販売能力超過分の損害額は否定されていたものの、令和5年改正・不正競争防止法では、その超過分について、侵害者にライセンスしたとみなし、使用許諾料相当額を損害額に算定できるとしています。これによって営業秘密侵害行為に対する増額請求も可能となります。

*令和5年改正前では、不正競争防止法5条1項の適用について、物を譲渡する場合に限定されていました。もっとも、令和5年改正・不正競争防止法によって、デジタル化に伴うビジネスの多様化を踏まえて、物の譲渡だけでなく、データや役務を提供する場合にも、不正競争防止法5条1項の適用が拡充されました。

使用等の推定規定の拡充(不正競争防止法5条の2)

 営業秘密の使用行為の立証責任は、原則として、営業秘密の被侵害者(被害者)側にあります。

 もっとも、営業秘密の使用行為は、侵害者のコントロール領域で行われることが多く、使用行為を立証することについて、通常は困難性を伴います。

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 そのため、平成27年改正・不正競争防止法によって、営業秘密の不正使用行為に関する一定の事実があれば、その立証責任を侵害者側に転換する推定規定(不正競争防止法5条の2)が設けられました。

 ただ、改正前は、産業スパイ等の悪質性が特に高いものに限定されており、その保護が十分ではなかったため、令和5年改正・不正競争防止法によって、推定規定の適用対象を拡充しました。

推定規定の適用対象(下線部分が令和5年改正によって追加)

(1)営業秘密へのアクセス権限がない者(産業スパイ等)

(2)不正に取得等した者から、その不正な経緯を知った上で転得した者

(3)もともと営業秘密にアクセス権限のある者(元従業員、業務委託先等)

(4)不正な経緯を知らずに転得したが、その経緯を事後的に知った者

*詳細は、経済産業政策局 知的財産政策室/特許庁 制度審議室「不正競争防止法等の一部を改正する法律【知財一括法】の概要」を参照

弁護士による不正競争防止法違反(営業秘密侵害行為)の対応

 弁護士は、企業が行うべき営業秘密を守るための予防策を構築するためのサポートが可能です。

①営業秘密管理規程の策定サポート

②雇用契約書、誓約書や就業規則の作成サポート

③秘密保持契約書や取引契約書のリーガルレビュー

④コンプライアンスや情報漏洩に関する研修

⑤営業秘密侵害行為に対する対応策(裁判外交渉、民事訴訟の提起、刑事告訴)

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Last Updated on 2024年7月30日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔

この記事の監修者

弁護士法人かける法律事務所 
代表弁護士 細井大輔

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