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製造業のハラスメント対策|現場の管理職が知っておきたい「業務指導」とパワハラの境界

はじめに

製造現場では、安全管理、品質管理、納期の遵守、作業手順の徹底などのため、管理職やベテラン社員が従業員に対して注意・指導を行う場面が少なくありません。

特に、安全に関わるルールが守られていない場合や、品質に影響するミスが繰り返されている場合には、管理職として厳しく注意しなければならないこともあります。

一方、企業からは、

  • 部下から「上司の指導がパワハラだ」と相談された
  • 管理職がパワハラと言われることを恐れ、十分な指導ができない
  • ベテラン社員の指導が厳しく、若手社員との関係が悪化している
  • どこまで厳しく指導するとパワハラになるのか分からない

といった相談を受けることがあります。

企業として重要なのは、ハラスメントを恐れて必要な指導をしなくなることではありません。

必要な業務指導を適切に行いながら、ハラスメントを防止することが重要です。

本稿では、製造業の管理職が知っておきたい「業務指導」と「パワーハラスメント」の境界、会社として取り組むべき対策について解説します。

パワーハラスメントとは

職場におけるパワーハラスメントとは、次の3つの要素をすべて満たすものをいいます。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
  3. 労働者の就業環境が害されること

ここでいう「優越的な関係」は、上司から部下への関係だけとは限りません。

例えば、業務経験や専門知識が豊富なベテラン社員から若手社員への言動など、その言動を受ける従業員が抵抗や拒絶をしにくい関係も含まれることがあります。

製造現場では、長年勤務している従業員が特定の技術やノウハウを持ち、役職にかかわらず、現場で大きな影響力を持っていることもあります。

そのため、「管理職ではないからパワハラにはならない」と単純に考えることはできません。

また、パワーハラスメントには、暴行などの「身体的な攻撃」だけでなく、侮辱やひどい暴言などの「精神的な攻撃」、仲間外しや無視などの「人間関係からの切り離し」、明らかに遂行困難な業務を強制する「過大な要求」など、さまざまなものがあります。

厳しい業務指導はパワハラになるのか

管理職には、部下に対して必要な業務指示や注意・指導を行う役割があります。

したがって、厳しい指導をしたからといって、直ちにパワハラになるわけではありません。

例えば、製造現場で従業員が安全上必要な作業手順を守っていない場合、そのまま放置すれば事故につながる可能性があります。管理職が問題点を明確に指摘し、改善するよう指導することは必要です。

品質上重大なミスを繰り返している場合や、決められたルールを守らない場合も同様です。

客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示・指導は、パワーハラスメントには該当しません。

重要なのは、

「厳しく指導したかどうか」ではなく、「その指導に業務上の必要性があり、その方法や程度が適切であったか」

という視点です。

「指導の目的」が正しくても、方法には注意が必要

安全上の問題や業務上のミスについて注意するなど、指導の目的自体は正しくても、その方法によってはパワハラと評価される可能性があります。

例えば、次のような指導には注意が必要です。

  • 感情的になり、大声で長時間叱責する
  • 「こんなこともできないのか」など、人格や能力そのものを否定する
  • 他の従業員がいる前で必要以上に叱責する
  • 同じ失敗について、必要以上に繰り返し責め続ける
  • 本人の説明を聞かず、一方的に決めつける

管理職として特に意識したいのは、「何を伝えるか」だけではなく、「どのように伝えるか」も重要であるということです。

例えば、

「今回の作業では○○の手順が守られていませんでした。この手順は安全上必要なので、次回から必ず確認してください」

と具体的な事実と改善事項を伝えることと、

「何回言ったら分かるんだ。こんなこともできないのか」

と本人の能力まで否定することでは、大きな違いがあります。

注意・指導では、従業員本人を批判するのではなく、問題となった行動や事実を具体的に指摘し、どのように改善してほしいのかを伝えることが重要です。

製造業で注意したい「ベテラン社員から若手社員への指導」

製造業では、管理職だけでなく、長年現場を経験しているベテラン社員が若手社員を指導することがあります。

技術やノウハウを次世代へ承継する上で、こうした指導は非常に重要です。

一方で、

「自分たちの若い頃はもっと厳しかった」
「これくらい言われるのは当たり前だ」
「仕事は見て覚えるものだ」

といった過去の経験をそのまま現在の指導方法に当てはめると、職場トラブルにつながることがあります。

本人に悪意がなく、「本人のために厳しく指導している」と考えていたとしても、それだけで適切な指導になるわけではありません。

また、管理職が直接行った言動ではなくても、ベテラン社員による若手社員への強い叱責等を管理職が把握しながら放置していれば、職場の問題がさらに深刻化することがあります。

会社としては、管理職だけでなく、実際に後輩や若手社員を指導する立場にある従業員にも、適切な指導方法を共有しておくことが重要です。

「パワハラが怖いから指導しない」も適切ではない

一方で、管理職から、

「注意するとパワハラと言われそうなので、何も言えない」

という声を聞くこともあります。

しかし、これも適切な状態とはいえません。

必要な指導をしないまま問題を放置すれば、ルールを守っている他の従業員に不満が生じたり、安全や品質に問題が生じたりする可能性があります。

また、問題のある行動を放置した結果、後から厳しい処分等を検討しようとしても、「会社はこれまで何も注意していなかった」ということが問題になる場合もあります。

したがって、企業が管理職に伝えるべきなのは、「厳しく指導してはいけない」ということではありません。

必要な指導は行う。ただし、具体的な事実に基づき、適切な方法で行う。

この考え方を管理職の間で共有することが重要です。

職場トラブルには「前兆」がある

ハラスメントや労務トラブルは、ある日突然大きな問題として発生するとは限りません。

実際の労務紛争では、問題が表面化する前から、

  • 職場での会話や情報共有が減る
  • 特定の従業員同士が避け合うようになる
  • 不満や反発が強くなる
  • 欠勤・遅刻・早退が増える
  • 「辞めたい」「もう無理だ」といった発言が出る

などの変化が見られることがあります。

こうした状況を「本人同士の問題だから」と放置すると、人間関係の対立が深まり、ハラスメントの申告、メンタル不調、休職、退職、さらには労務紛争へと発展する可能性があります。

管理職には、問題が大きくなってから対応するのではなく、職場の小さな変化に気づき、早い段階で声を掛けることが求められます。

会社として「管理職が対応できる仕組み」をつくる

ハラスメント対策では、就業規則の整備や相談窓口の設置も重要です。

しかし、制度を整えるだけでは十分ではありません。

実際の職場で従業員の変化に気づき、相談を受け、最初に対応するのは、現場の管理職であることが少なくないからです。

管理職には、少なくとも、

  • 業務指導とハラスメントの境界を理解する
  • 職場トラブルの兆候に早く気づく
  • 部下から相談を受けた際に、決めつけず事実を確認する
  • 重要な相談や対応について記録を残す
  • 自分だけで抱え込まず、会社へ報告・相談する

といった対応が求められます。

そのため、ハラスメント研修も、単に法律上の定義や禁止事項を説明するだけではなく、「実際に職場で問題が起きたとき、管理職は何を確認し、どのように行動すればよいのか」まで具体的に学ぶことが重要です。

製造業のハラスメント対策・労務トラブルは、かける法律事務所へご相談ください

弁護士法人かける法律事務所では、製造業をはじめとする企業の労務問題について、トラブルが発生する前の予防から、実際に問題が発生した後の対応までサポートしています。

管理職向けハラスメント研修

「一般的なハラスメント研修ではなく、自社の管理職が実際に使える研修を行いたい」という企業に対し、弁護士が研修を実施します。

パワーハラスメントの基礎知識だけでなく、

  • 業務指導とパワハラの境界
  • 管理職自身が加害者にならないための注意点
  • 職場トラブルの兆候への気づき方
  • 部下から相談を受けた場合の対応
  • トラブル発生時の初動対応

など、管理職が現場で判断・行動するための実践的な内容を取り扱います。

企業の業種、職場環境、実際に抱えている課題等を踏まえ、研修内容を設計することも可能です。

ハラスメント・労働トラブル発生時の対応

すでに、

「従業員からハラスメントの申告があった」
「管理職の指導方法について問題が生じている」
「従業員同士の対立が深刻化している」
「会社としてどこまで事実調査をすればよいか分からない」

といった問題が発生している場合には、初動対応が重要です。

対応が遅れたり、十分な事実確認をしないまま結論を出したりすると、問題がさらに深刻化することがあります。

弁護士法人かける法律事務所では、事実関係の整理・調査方法の検討、当事者への対応、注意・指導、懲戒処分その他の人事労務上の対応まで、企業側の立場からサポートします。

まとめ

製造現場では、安全・品質・納期などを守るため、管理職やベテラン社員による適切な業務指導が欠かせません。

大切なのは、ハラスメントを恐れて指導を避けることではなく、必要な指導を、適切な方法で行うことです。

そして、ハラスメント対策は、問題が発生してから始めるものではありません。

管理職が業務指導とハラスメントの境界を理解し、職場の小さな変化に気づき、問題が深刻化する前に対応できる体制をつくることが重要です。

管理職向けのハラスメント研修を検討している企業や、すでに職場でハラスメント・従業員間のトラブルが発生している企業は、弁護士法人かける法律事務所へご相談ください。

予防のための研修から、実際の労務トラブルへの対応まで、企業の状況に応じてサポートします。

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代表弁護士 細井 大輔

私は、日本で最も歴史のある渉外法律事務所(東京)で企業法務(紛争・訴訟、人事・労務、インターネット問題、著作権・商標権、パテントプール、独占禁止法・下請法、M&A、コンプライアンス)を中心に、弁護士として多様な経験を積んできました。その後、地元・関西に戻り、関西の企業をサポートすることによって、活気が満ち溢れる社会を作っていきたいという思いから、2016年、かける法律事務所(大阪・北浜)を設立しました。弁護士として15年の経験を踏まえ、また、かける法律事務所も6年目を迎え、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、関西の企業・経営者の立場に立って、社会の変化に対応し、お客様に価値のあるリーガルサービスの提供を目指します。

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