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製造業で秘密保持誓約書はなぜ必要?入社時に取得すべき理由と取得しないリスクを弁護士が解説

よくある相談例

  1. 退職した従業員が、図面や製造ノウハウ、取引先情報などを競合他社へ持ち出さないか心配です。秘密保持誓約書は必要でしょうか?
  2. 従業員には秘密保持義務があると聞いていますが、入社時に秘密保持誓約書を取得していません。法的にどのようなリスクがありますか?
  3. 秘密保持誓約書を作成するだけで十分でしょうか。それとも、営業秘密を守るためには社内ルールや管理体制も整備する必要がありますか?

なぜ製造業で秘密保持誓約書が重要なのか

製造業では、製品やサービスそのものだけでなく、日々の業務を通じて蓄積された技術やノウハウも重要な経営資産です。例えば、製品図面やCADデータ、加工条件、製造ノウハウ、品質管理基準、試作品の情報、取引先情報、見積価格や原価情報などは、企業の競争力を支える重要な情報といえます。

こうした情報が退職した従業員などを通じて競合他社へ流出した場合、企業の競争優位性が失われるだけでなく、取引先との信頼関係にも大きな影響を及ぼすおそれがあります。近年では、紙の資料だけでなく、USBメモリやクラウドストレージ、私物スマートフォンなどを利用した情報の持ち出しも容易になっており、情報漏えいリスクはこれまで以上に高まっています。

このようなリスクに備えるためには、「秘密情報を外部へ漏らしてはならない」というルールを、従業員に対して明確に示しておくことが重要です。そのための基本となるのが、入社時に取得する秘密保持誓約書です。秘密保持誓約書を作成することで、秘密保持義務の内容や対象となる情報を従業員と共有し、情報管理に対する意識を高めることにもつながります。

なぜ退職時ではなく「入社時」に取得すべきなのか

秘密保持誓約書というと、退職時に取得するものというイメージを持たれることがあります。しかし、企業の情報管理という観点からは、秘密保持誓約書は退職時ではなく、入社時に取得しておくことが重要です。

その理由は、従業員が業務を開始した時点から、図面や製造ノウハウ、品質管理基準、顧客情報など、会社の重要な情報に日常的に接することになるためです。入社時に秘密保持義務の内容や対象となる情報を明確に説明し、誓約書を取得しておくことで、従業員自身も「会社の重要な情報を適切に管理しなければならない」という意識を持って業務に取り組むことができます。

一方で、退職する従業員には、会社が求めたからといって秘密保持誓約書に署名・押印しなければならない法的義務は、原則としてありません。そのため、退職時になって初めて秘密保持誓約書への署名を求めても、従業員がこれを拒否することもあり得ます。また、「これまで説明を受けていなかった内容に、なぜ今になって署名しなければならないのか」と疑問を持たれ、円滑に取得できないケースも少なくありません。

もちろん、退職時に改めて秘密保持義務や競業避止義務を確認し、秘密保持誓約書を取得することにも一定の意義があります。しかし、それは入社時から秘密保持に関するルールを整備していることが前提となります。製造業において重要な営業秘密を守るためには、「退職時に取得すればよい」という考え方ではなく、入社時から秘密保持誓約書を取得し、継続的な情報管理体制を構築しておくことが重要です。

秘密保持誓約書がない場合に生じるリスク

リスク1秘密保持義務の範囲が曖昧になる

雇用契約においては、従業員は一般的に会社の秘密を漏らしてはならない義務を負うと考えられています。しかし、秘密保持誓約書を作成していない場合、「何が秘密情報に当たるのか」「どのような行為が禁止されるのか」が明確でないケースも少なくありません。

特に製造業では、図面やCADデータ、製造ノウハウ、品質管理基準、取引先情報など、多種多様な情報を取り扱います。秘密保持誓約書によって秘密情報の範囲や従業員の義務を明確にしておくことで、情報漏えいの予防につながります。

リスク2情報漏えい時の対応が難しくなる

秘密保持誓約書がない場合、退職した従業員による情報の持ち出しや漏えいが疑われても、会社として適切な対応を取りにくくなる場合があります。

例えば、従業員に対して情報の返還や削除を求めたり、損害賠償請求や差止めなどの法的対応を検討したりする際にも、あらかじめ秘密保持義務の内容を明確に定めていたかどうかは重要な事情の一つとなります。

また、秘密保持誓約書が整備されていれば、従業員に対する注意喚起の効果も期待でき、情報漏えいそのものを未然に防ぐ効果もあります。

リスク3営業秘密として保護を受けにくくなる可能性がある

秘密保持誓約書を作成していないからといって、直ちに法的保護が受けられなくなるわけではありません。しかし、不正競争防止法上の「営業秘密」として保護を受けるためには、その情報が適切に管理されていること(秘密管理性)が重要な要件となります。

秘密保持誓約書は、「会社が秘密情報として管理していたこと」を示す重要な資料の一つになります。そのため、誓約書が存在しない場合には、会社として秘密情報を適切に管理していたことの説明が難しくなる可能性があります。

もっとも、秘密保持誓約書を作成するだけで営業秘密として保護されるわけではありません。営業秘密として法的保護を受けるためには、社内ルールの整備やアクセス権限の設定、秘密表示など、適切な秘密管理措置を講じることも重要です。

秘密保持誓約書だけでは足りない?営業秘密を守るためのポイント

秘密保持誓約書は、従業員に秘密保持義務を明確に伝えるための重要な書類ですが、それだけで営業秘密が十分に保護されるわけではありません。

不正競争防止法上の「営業秘密」として法的保護を受けるためには、秘密保持誓約書に加え、会社として秘密情報を適切に管理していること(秘密管理性)が重要となります。

そのため、製造業では、秘密保持誓約書とあわせて、次のような管理体制を整備しておくことが重要です。

  • 秘密情報の範囲を明確にし、従業員へ周知する
  • 図面、CADデータ、技術資料などの重要資料には、「社外秘」「Confidential」などの秘密表示を行う
  • 重要データへのアクセス権限を必要最小限の担当者に限定する
  • USBメモリやクラウドストレージへの保存、私物端末への持ち出しなどに関する社内ルールを整備する
  • 就業規則、秘密保持誓約書、競業避止義務に関する規定などを相互に整合した内容とする

このように、秘密保持誓約書は情報管理体制の一部であり、それ単独で十分というものではありません。営業秘密を適切に保護するためには、契約書・就業規則・社内ルール・情報管理体制を一体的に整備し、継続的に運用していくことが重要です。

かける法律事務所のサポート

営業秘密を守るためには、秘密保持誓約書を作成するだけでは十分ではありません。会社の実情に応じて、就業規則や社内ルール、営業秘密管理体制などを一体的に整備し、継続的に運用していくことが重要です。

弁護士法人かける法律事務所では、製造業の企業様を中心に、営業秘密の保護や情報漏えい対策について、次のような実務支援を行っています。

  • 秘密保持誓約書(入社時・退職時)の作成・見直し
  • 就業規則・情報管理規程など社内規程との整合性チェック
  • 営業秘密管理体制(秘密情報の管理方法・アクセス権限・運用ルール等)の構築支援
  • 競業避止義務に関する規定や誓約書の作成・見直し
  • 情報漏えいが発生した場合の初動対応、従業員対応、損害賠償請求などの法的サポート
  • 従業員・管理職向けコンプライアンス研修や情報管理研修の実施

製造業では、図面や製造ノウハウ、品質管理基準、顧客情報など、企業の競争力を支える重要な情報を数多く取り扱います。当事務所では、こうした営業秘密を適切に保護するため、契約書や就業規則の整備にとどまらず、実際に運用できる情報管理体制の構築まで見据えた実務的なサポートを提供しています。

まとめ

秘密保持誓約書は、従業員による情報漏えいを防止し、営業秘密を適切に保護するための重要な第一歩です。しかし、秘密保持誓約書を作成するだけで十分というわけではありません。製造業では、営業秘密管理体制の整備や就業規則との整合性の確保、競業避止義務に関するルールの整備などを含め、情報管理を組織全体で行うことが重要です。

また、情報漏えいは、一度発生すると企業の競争力の低下や取引先からの信頼喪失など、事業に大きな影響を及ぼすおそれがあります。そのため、トラブルが発生してから対応するのではなく、入社時から適切なルールを整備し、営業秘密を守る仕組みを構築しておくことが重要です。

弁護士法人かける法律事務所では、製造業の企業様を対象に、秘密保持誓約書の作成・見直しをはじめ、就業規則や社内規程の整備、競業避止義務に関する実務対応、従業員向けコンプライアンス研修まで幅広くサポートしています。

「自社の秘密保持誓約書はこのままで問題ないだろうか」「営業秘密を守るための体制を見直したい」とお考えの企業様は、お気軽に弁護士法人かける法律事務所までご相談ください。

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代表弁護士 細井 大輔

私は、日本で最も歴史のある渉外法律事務所(東京)で企業法務(紛争・訴訟、人事・労務、インターネット問題、著作権・商標権、パテントプール、独占禁止法・下請法、M&A、コンプライアンス)を中心に、弁護士として多様な経験を積んできました。その後、地元・関西に戻り、関西の企業をサポートすることによって、活気が満ち溢れる社会を作っていきたいという思いから、2016年、かける法律事務所(大阪・北浜)を設立しました。弁護士として15年の経験を踏まえ、また、かける法律事務所も6年目を迎え、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、関西の企業・経営者の立場に立って、社会の変化に対応し、お客様に価値のあるリーガルサービスの提供を目指します。

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