雇入れ時の企業による健康診断義務について弁護士が解説

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弁護士によるハラスメント対応

弁護士法人かける法律事務所では、企業におけるメンタルヘルス・ハラスメント対応について、企業の皆様のニーズに基づいたサポート・支援を行っています。メンタルヘルス・ハラスメント対応で悩み・不安のある企業(経営者様)は、是非、一度、当事務所にご相談ください。

企業による健康診断義務

働き方の多様化が求められる中で、労働時間の長短が二極化となったり、労働者の高齢化も進んでいます。このような背景において、脳・心臓疾患につながる異常所見が認められる労働者が年々増加していると指摘されています。

しかも、労働者が業務上の事由によって脳・心臓疾患を発症し、突然死亡等の重大に至る事例(過労死)も多発しており、社会的な問題になっています。

そのため、企業(事業者)は、労働者の健康状態を的確に把握し、その結果に基づき、医学的知見を踏まえて、労働者の健康管理を適切に行うことが求められています。

その健康管理の一環として、企業は、労働安全衛生法66条に従い、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。

また、健康診断の結果、異常な所見があると診断された労働者には、医師等の意見を十分に勘案し、必要に応じて、労働者の実情を考慮しながら、就業場所を変更したり、作業の転換、労働時間の短縮等の就業上の措置を行う必要がある場合があります。

企業は、以下の2つのポイントに留意しながら、労働者の健康管理を適切に行うことが求められます。

①事業者は労働安全衛生法に従い、健康診断を実施する義務を負う。

②事業者は健康診断の結果に基づき適切かつ有効な就業上の措置を行う。

事業者による健康診断の実施は、労働安全衛生法に基づく事業者の義務です。もっとも、労働者の健康管理を適切に行うことは、働きやすい職場環境を確保し、離職率の低下やブランディングの向上につながる重要な施策といえます。人材の採用が困難となっている、人材が定着しないという会社では、健康診断の位置付けについて、是非、一度検討してみてください。

健康診断の種類

健康診断には、一般健康診断や特殊健康診断があります。ここでは一般健康診断のうち、雇入れ時の健康診断と定期健康診断について説明します。

(1)雇入れ時の健康診断

常時使用する労働者が対象となり、雇入れの際に行います。

(2)定期健康診断

常時使用する労働者が対象となり、1年以内ごとに1回行います。

*常時使用する労働者とは、以下の①及び②のいずれの要件も満たす者となります。正社員ではなくても、以下の①及び②の要件を満たすパート社員やアルバイト社員に対しても健康診断を行う義務があります。

①期間の定めのない雇用契約によって従事する者又は期間の定めのある契約によって従事する者の場合、1年以上従事することが予定されている者及び更新によって1年以上従事している者。

②その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること

労働者の健康診断受診義務

労働者は、労働安全衛生法66条5項で、「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。」とされており、健康診断受診義務があります。

その一方、同項但書において、「事業者の指定した医師又は歯科医師が行う健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行うこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。」とし、労働者による医師選択の自由も認めています。

このように事業者による健康診断実施義務があるとともに、労働者も健康診断受診義務があります。

そのため、企業が健康診断を受診する機会を与えているにもかかわらず、労働者が合理的な理由もなく、受診を拒否し、受診命令に従わない場合、労働者に対して懲戒処分を課すこともできます。

事業者による健康診断のポイント

①事業者による健康診断は、従業員の健康管理を適切に行うことを目的としており、企業は、労働安全衛生法に従い、健康診断を実施する義務があります。事業者が健康診断実施義務を怠る場合、50万円以下の罰金に処せられることがあります(労働安全衛生法120条1号)。

②事業者は、健康診断の実施に当たっては、受診率が向上するように労働者に対する周知及び指導に努める必要があります(健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針)。産業医を選任する義務のある事業場では、産業医に対して、健康診断の計画や実施上の注意について、助言を求める必要があります。

③事業者は健康診断を行うだけでなく、健康診断の結果について、労働者に通知したり、個人票を作成し、一定の期間保存する義務を負います。健康診断を行って、終わりではありません。

④事業者は、健康診断の結果、異常な所見があると診断された労働者に対して、労働安全衛生法で定められた手続に従い、適切かつ有効な就業上の措置を行う必要があります。

健康診断についてよくある誤解

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1 企業による費用負担

厚生労働省のホームページでも、「労働安全衛生法等で事業者に義務付けられている健康診断の費用は、法により、事業者に健康診断の実施が義務付けられている以上、当然に事業者が負担すべきものとされています。」とされており、労働安全衛生法に基づく健康診断は、企業側が負担すべきものとなります。もっとも、人間ドックやオプション検査、再検査に関し、労働安全衛生法を超える範囲では、従業員負担とすることもできます。

労働安全衛生法が求める範囲・内容を確認したうえで、企業のルールや従業員との話し合いによって費用負担の問題を決定する必要があります。

2 労働基準監督署への報告義務

事業者の規模や業務内容、健康診断の種類・内容によっては、健康診断の結果を労働基準監督署へ報告する義務があります。例えば、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断の結果を遅滞なく所管労働基準監督署長に報告しなければなりません。

3 健康診断の結果を理由とする不利益な取り扱いの防止

健康診断の結果に従い、事業者は、労働者の健康の確保を目的として就業上の措置をとることは必要ですが、必要な範囲を超えて、労働者に不利益な取り扱いを行ってはならないとされています(健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針)。例えば、以下の不利益な取り扱いが禁止されます。

①健康診断の結果に基づく必要な措置に際して、医師の意見を聴取せず、不利益な取り扱いを行うこと

②医師の意見とその内容・程度が著しく異なり、必要な範囲を超えて取扱を行うこと

健康診断に関する労働問題は弁護士に相談を

弁護士への相談例:

①健康診断を受診してくれない従業員がいる。

②健康診断の費用負担について、従業員との間で揉めている。

③健康診断の報告について、労働基準監督署から調査を受けている。

④健康診断の結果に基づいて、従業員の処遇を変更したい。

⑤健康診断に関する情報管理の方法がわからない。

弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。 健康診断に関する労働問題について、お悩みや不安がある企業(経営者)の皆様は、是非お問い合わせいただき、ご相談ください。

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Last Updated on 2023年8月14日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔

この記事の監修者

弁護士法人かける法律事務所 
代表弁護士 細井大輔

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