契約社員の雇止めは無効になる場合も?雇止め法理を弁護士が解説

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相談例

①有期雇用契約を締結するときの注意点を教えてほしい。

②雇止めをしたら、労働組合から団体交渉を申し入れられた。

③経営不振のため、雇止めを行いたいが、注意点を知りたい。

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雇止めとは?

 雇用契約は、契約期間の観点から、①無期雇用契約(正社員)と②有期雇用契約の2つに分類することができます。②有期雇用契約とは、期間の定めのある雇用契約をいいます(労働契約法17条1項)。

 雇止めとは、有期雇用契約において、雇用期間を更新せず、雇用契約を終了させることをいいます。

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有期雇用契約の具体例

日雇い、臨時工、季節労働者、契約社員、アルバイト、嘱託、パート

労働契約法で法定化された契約社員の雇止め法理(雇止め制限法理)とは

 有期雇用契約では、原則として、雇用期間が定められているため、雇用期間の満了によって、雇用契約が終了します。この終了について、特別な理由は必要とされません。

 もっとも、有期雇用契約であっても、①雇用契約の更新の繰り返しによって実質的に無期雇用契約と同視できる場合や②雇用契約の更新について合理的な期待が認められる場合について、労働者(従業員)を保護する観点から、雇止めが制限されることがあります(労働契約法19条)。

 この雇止めに関する制限を「雇止め法理」(雇止め制限法理)といい、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めが無効とされる可能性があります。

 そのため、労働者(従業員)から雇止めの有効性が裁判又は裁判外において争われるケースが増えています。

労働契約法19条(有期労働契約の更新等)

 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間 の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させること が、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより 当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められるこ と。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新さ れるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

雇止め法理の類型

 雇止め法理では、以下の類型が問題となり、雇止めが制限される可能性があります。

①実質無期雇用型

 無期雇用契約と実質的に異ならない状態に至っている場合

②反復更新型

 反復更新の実態から雇用継続への合理的な期待がある場合

③期待特約型

 雇用継続への合理的期待が当初の雇用契約締結時から発生している場合

雇止め法理の判断基準

 雇止め法理では、主に以下の判断要素が用いられ、雇止めの有効性が判断されます。

①業務の客観的内容

→従事する業務の種類、内容や勤務形態が正社員と同一といえるか。

②雇用契約上の地位の性格

→雇用契約上の地位が基幹的か、それとも、臨時的か(いわゆる嘱託や非常勤講師、アルバイト)。

→労働条件が正社員と同一化といえるか。

③当事者の主観的態様

→継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無、程度

④更新の手続・実態

→契約更新の状況や契約更新時における手続の内容

⑤他の従業員の更新状況

→他の有期雇用労働者の雇止めの有無や内容

初回の更新拒否でも雇止めが無効となることがある?ー雇止めが無効となった裁判例

 労働契約法19条が規定する雇止め法理について、同1号では反復継続を要件としていますが、同2号では反復継続を要件としておらず、有期雇用契約の更新について合理的な期待があれば、雇止め法理が適用されるとしています。

 そのため、初回の更新拒否でも、雇用継続に対する合理的期待が肯定されると、雇止めが無効となる可能性もあります。

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大阪高判平成3年1月16日(龍神タクシー事件・仮処分異議事件)

 タクシーの臨時雇運転手として有期雇用契約(1年間)を締結した従業員に関し、最初の更新時の雇止めについて、会社では、自己都合による退職者を除いて、例外なく雇用契約が更新され、更新拒絶された事例がなく、当該従業員も1年限りで辞めてもらうという話を聞かされず、他の運転手らから自動的に雇用契約が更新されると聞いていたため、雇用契約が更新され継続して雇用されると期待していたことから、「従前の取扱いを変更して契約の更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情が存しないかぎり、被申請人において、期間満了を理由として本件雇用契約の更新を拒絶することは、信義則に照らし許されないものと解するのが相当である」と判断し、雇止めの効力を否定しました。

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福岡地判平成2年12月12日(福岡大和倉庫事件)

 経営合理化に際して期間の定のない臨時従業員の雇用形態を雇用期間を1年とする有期契約として締結したケースにおいて、「本件における一連の特殊な経緯、雇用の実態と人員削減の必要性、人員削減の時期及び方法、労使間の交渉過程等諸般の事情を総合的に検討すると、本件については、被告において従来の取扱方針を変更して雇用契約を終了させてもやむを得ないといえるような特段の事情は存在しないと言うべきであるから、被告が本件雇用契約で形式的に定められている雇用期間が満了したことを理由として原告らに対し直ちに本件雇止めをしたことは、信義則上からも許されないものと言わなければならず、他に、本件雇用契約の更新を妨げるような事情は主張されておらず、そのような証拠もないので、原告らは、本件雇用契約が更新されたことにより被告の従業員としての地位を継続して有する者と認められる」とし、雇止めの効力を否定した。

有期雇用契約における雇止めの注意点

 有期雇用契約に関するルールについて、厚生労働省は、労働基準法14条2項に基づき、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(厚生労働省告示357号)を定めています。

 そのため、有期雇用契約の締結や雇止めにおいて、これらのルールを遵守する必要があります。

①契約締結時の明示事項

 会社は、有期雇用契約を締結するとき、有期雇用契約の更新の有無を明示しなければなりません。また、有期雇用契約を更新する場合があると明示したときは、従業員に対して、有期雇用契約を更新する場合又は更新しない場合の判断基準を明示する必要があります。

判断基準の具体例

・従業員の勤務成績、態度によって判断する

・会社の経営状況によって判断する

・従業員の能力や業務の進捗度によって判断する

②雇止めの予告期間

 会社は、有期雇用契約を締結している従業員(*)について、有期雇用契約を更新しない場合、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに、その旨を予告しなければなりません。

*有期雇用契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている従業員に限定されます。

③雇止めの理由の明示

 会社は、雇止めの予告を行った後、従業員から雇止めの理由について証明書を請求した場合、遅滞なく、その証明書を交付しなければなりません。また、雇止め後に従業員から請求された場合も同様です。

雇止めについて弁護士が対応できること

 雇止めの対応について、一歩間違うと、雇止めが無効となったり、従業員との間で紛争・訴訟が発生するリスクがあります。

 弁護士は、紛争・訴訟対応や労働法に精通しており、雇止めについて、以下の対応が可能です。

①従業員(元従業員)又はその代理人弁護士との代理交渉

②労働組合による団体交渉の対応

③雇用契約書や雇止理由証明書の作成・チェック

④有効な雇止めに向けたアドバイス、チェック

⑤労働審判や労働裁判への対応

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Last Updated on 2024年11月28日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔

この記事の監修者

弁護士法人かける法律事務所 
代表弁護士 細井大輔

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