【弁護士が解説】2024年4月1日から労働条件の明示・説明・求人情報ルールが変更(改正)されます~労働契約(雇用契約)の締結に際して必要となる労働条件の明示義務等について~

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労働契約(雇用契約)の締結に際して必要となる労働条件の明示義務等を弁護士が解説します~2024年4月1日から労働条件の明示・説明・求人情報ルールが変更(改正)されます~

労働契約(雇用契約)とは

 労働契約法6条では、労働契約を「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」とされています。

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労働契約(雇用契約)の特徴

①労働者と使用者との間の合意であること

②労働者が使用者の指揮命令に従って労務を提供する義務を負うこと

③使用者が労務提供に対する対価として賃金を支払うこと

労働契約(雇用契約)に関連する法律

 労働契約(雇用契約)も契約(合意)であるため、原則として、使用者と労働者との間で自由に、その内容を決めることができます。

 もっとも、実際は、労働契約(雇用契約)において、使用者と労働者との間で交渉力を含めて格差があり、労働者を保護するために、労働契約(雇用契約)に関連する法律によって一部規制を受けます。

労働契約(雇用契約)に関連する法律

①民法

②労働基準法(労基法)

③労働契約法(労契法)

④労働組合法(労組法)

⑤雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(均等法)

⑥最低賃金法

*一般的に労働法と総称されることがありますが、労働法という名称の法律があるわけではありません。

*労働条件は、労働契約(雇用契約)に加えて、就業規則でも規定されています。就業規則の内容も労働条件の一部となります(労働契約法7条)。

労働契約(雇用契約)に際する労働条件の明示義務~労働基準法151項~

 労働契約書は、事後的なトラブル・紛争を防止するためにも、また、労働者が安心して労働に専念するためにも、その作成が望ましいといえます(労働契約法4条2項)。もっとも、労働契約は、口頭で成立するとされており、労働契約書の作成は必ずしも必須とされていません。これを、「諾成契約」といいます。

 もっとも、労働基準法15条1項では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」とされており、使用者に対して労働条件の明示義務を定めています。使用者が労働者に対して明示する労働条件は、労働基準法施行規則5条1項に規定されています。

 この労働条件の明示義務を遵守するため、実務的には、労働条件通知書が作成され、労働者に対して交付されることが一般的です。

【コラム】労働契約書(雇用契約書)を作成するメリットを弁護士が解説します~従業員が安心して働き、業務に専念できるように~

労働基準法施行規則51項(202441日改正前)

①労働契約の期間に関する事項

②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

③就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

④始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

⑤賃金(退職手当や賞与等は除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む)

⑦退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

⑧臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及び勤続手当等並びに最低賃金額に関する事項

⑨労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

⑩安全及び衛生に関する事項

⑪職業訓練に関する事項

⑫災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

⑬表彰及び制裁に関する事項

⑭休職に関する事項

改正ポイント202441日から労働条件の明示ルールが変更されます(労働基準法施行規則51項)

 2024年4月1日から、労働基準法施行規則5条1項の改正によって、労働条件の明示ルールが以下のとおり、変更されます。

(1)すべての労働者に対する明示ルール

 すべての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、雇用直後の就業場所や業務内容に加え、就業場所や業務内容の「変更の範囲」も明示することが必要となります。

 ここでいう「変更の範囲」とは、将来の配置転換等によって変わる可能性のある就業場所・業務の範囲を意味します。

企業の労務トラブルは使用者側に特化した大阪の弁護士にご相談ください

労働条件通知書の記載例

就業の場所      (雇入れ直後) ●●       (変更の範囲) ●●

従事すべき業務の内容 (雇入れ直後) ●●       (変更の範囲) ●●

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(2)有期契約労働者に対する明示ルール

更新上限の明示(明示時期:有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごと)

→更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。

無期転換申込機会の明示(明示時期:「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと)

→無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要になります。

無期転換後の労働条件の明示(明示時期:「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと)

→無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

労働条件通知書の記載例

①【契約期間】

 更新上限の有無(無・有 (更新●回まで/通算契約期間●年まで)) 

②【同一の企業との間での通算契約期間が5年を超える有期労働契約の締結の場合】

  本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをしたときは、本契約期間の末日の翌日( 年 月 日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。

 この場合の本契約からの労働条件の変更の有無( 無 ・ 有(別紙のとおり) ) 

参考:厚生労働省ウェブサイト「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」

改正ポイント202441日から労働条件の説明ルールが変更されます(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)

更新上限の明示との関係で必要となる説明

 i)最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合又はii)最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合は、更新上限を新たに設ける、または短縮する理由を有期契約労働者にあらかじめ(更新上限の新設・短縮をする前のタイミングで)説明することが必要になります。

無期転換後の労働条件の明示との関係で必要となる説明

 「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するに当たって、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。

参考:厚生労働省ウェブサイト「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」

改正ポイント202441日から求職者への労働条件明示ルールが変更されます(職業安定法施行規則の改正)。

 求職者に対し明示しなければならない労働条件に、以下の事項が追加されました。企業が求人する際に、これらの情報を記載しているかどうかを確認する必要があります。

①従事すべき業務の変更の範囲

②就業場所の変更の範囲

③有期労働契約を更新する場合の基準

参考:厚生労働省ウェブサイト「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」

202441日までに企業(使用者)が対応すべきこと

①従業員に対して労働条件を明示する項目が変更されます(改正ポイント①)。労働条件通知書の記載内容を再チェックする必要があります。

②有期労働契約の対象となる従業員に対する説明内容が変更されます(改正ポイント②)。有期労働契約の対象となる従業員に説明する内容を再チェックする必要があります。

③従業員を募集するときに明示すべき労働条件が変更されます(改正ポイント③)。求職者に対して明示すべき労働条件を再チェックする必要があります。

弁護士による労働契約(雇用契約)に関連するサポート内容

 弁護士は、労働契約(雇用契約)において、以下のサポートが可能です。労働法や紛争・訴訟対応に精通している弁護士だからこそ、できることが多くあります。

①求職情報のチェック

②労働条件通知書や労働契約書(雇用契約書)の作成・変更サポート

③就業規則や給与規定の作成・変更サポート

④従業員(労働者)又はその代理人(弁護士)との交渉・窓口対応

⑤労使交渉や労働組合との交渉におけるサポート

⑥労働裁判の代理人対応

雇用契約(労働契約)については弁護士にご相談を

 弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。

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Last Updated on 2024年11月14日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔

この記事の監修者

弁護士法人かける法律事務所 
代表弁護士 細井大輔

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