労働災害(労災)とは?
労働災害(労災)とは、会社の業務が原因で従業員が負傷したり、病気になったりすることをいいます。労働安全衛生法では、「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること」と定義づけています(労働安全衛生法2条1号)。
厚生労働省による調査によれば、令和5(2023)年では、労働災害による死亡者数が755名で、休業4日以上の死傷者数は135,371名となっています(新型コロナウイルス感染症を除く。)。
会社は、従業員の生命・身体や安全を守るためにも、業務に起因する従業員の負傷を防ぐために(安全)、また、疾病を防ぐために(衛生)、その対応策が求められます。その対応策を規定する法律が労働安全衛生法となります。
最近は、長時間労働や過重な労働を理由に発症した脳や心臓の疾患が労働災害として問題となったり、業務による強いストレス(長時間労働やパワーハラスメント)に起因して発症した精神障害について、労働災害(労災)の該当性が争われるケースも増えており、企業側の労働災害について、その対応方法を間違えないことが重要な経営課題の一つとなっています。
労働安全衛生法1条(目的)
この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
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会社側の労働災害(労災)対応が必要となる場面
①建設業(事故)
移動式クレーンの荷台から鉄骨を降ろす作業中、被災者が荷台から滑り落ちてきた鉄骨と近くにあった鉄骨の間にはさまれ死亡した。
②建設業(事故)
8階建てのビル屋上での足場組み立て作業で、被災者が屋上の床スラブ上を移動中、開口部から30m下の地上まで墜落して死亡した。
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③製造業(事故)
工場敷地内でフォークリフトが後進中のトラクター・ショベルに激突され、横転したフォークリフトの運転士が死亡した。
④製造業(長時間労働)
4か月の間、従業員10名に対して、月120時間、1日5時間の時間外労働を行わせていたところ、長時間にわたる過重な労働を原因として、従業員1名が自死した。
⑤教育・研究業(パワーハラスメント)
上司が部下に対して人格や人間性を否定するような業務上明らかに必要性がなく、業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃(パワーハラスメント)を行い、部下が抑うつ気分、食欲低下といった症状が生じ、心療内科を受診したところ、「適応障害」と診断された。
⑥金融・広告業(セクシュアルハラスメント)
男性従業員が女性従業員に対して、胸や腰等へ身体接触(セクシュアルハラスメント)を複数回行い、女性従業員が会社に相談しても適切な対応がなく、改善されず、職場環境が悪化したため、抑うつ気分や不眠などの症状が生じ、「うつ病」と診断された。
会社が労働災害(労災)対応を行う必要性
会社は、職場における従業員の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を整備する必要があります(労働安全衛生法1条)。
労働契約法5条でも、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とされ、会社の従業員に対する安全配慮義務が確認的に規定されています。つまり、会社が従業員に対して安全配慮義務を果たすためにも、労働災害(労災)対応は必要であり、まずは労働災害(労災)が発生しないように、その仕組みを整備する必要があります。
【会社が採るべき措置】
①安全管理体制の確立
②従業員の危険又は健康障害を防止するための措置
③機械、危険物及び有害物に関する規制
④従業員の就業に当たっての措置
また、労働災害(労災)対応を十分に行わない場合、従業員(又はその遺族等)から会社に対して多額の損害賠償請求が行われ、労働紛争や労働裁判に発展することがあります。
このような場合、会社は、従業員による請求の当否を判断し、その対応方法を検討しなければなりません。特に、労働災害に起因する損害賠償請求は、ケースによっては、死亡や重度な障害という結果が生じている場合もあり、その請求金額は高額となる傾向があります。労働災害の発生によって、事業の継続が危ぶまれることもあります。
会社側の労働災害対応を弁護士に依頼するメリット
メリット1 法的判断を踏まえた適切な解決が可能であること
労働災害トラブルに起因して、従業員等による会社に対する損害賠償請求等では、高額な請求が行われることが多々あります。このような請求に対して、本来的に会社が責任を負うものなのか、また、会社の責任と損害との間に因果関係があるのか等法的に判断する必要があります。
特に、労働災害トラブル対応では、①業務起因性の有無、②安全配慮義務違反の有無、③相当因果関係の有無、④損害の範囲等法的な争点や問題が数多く発生します。
また、企業がその責任を認めるべき場合でも、法的判断を踏まえて、再発防止策を含めた将来的な対応を検討する必要があります。会社内部だけで検討することは、第三者に対する信頼を確保できるのか、また、法的に求められる要求・水準をクリアしているかどうか判断することが難しくなります。
労働災害対応を会社が弁護士に依頼することによって、法的判断を踏まえて適切な解決が可能となります。
メリット2 経営者/人事担当者の負担を軽減し、本質的な業務に専念
従業員等との交渉や労働組合・労働基準監督署への対応は、経営者や人事担当者の皆様にとっては精神的・物理的な負担も大きく、冷静さを忘れて、判断してしまうこともあります。そうすると、誤った経営判断につながり、また、労務・人事トラブルを誤って解決してしまうと、他の従業員へも波及してしまい、企業の経営や事業に重大な損害が生じてしまいます。
弁護士に依頼することによって、経営者や人事担当者の負担が軽減され、より本質的な業務に専念し、適切な判断が可能となります。弁護士法人かける法律事務所は、企業・経営者側の労務・人事問題に注力しており、企業・経営者の皆様の立場に立った解決策を提案します。
メリット3 職場環境の整備による人材の定着や早期離職の回避
労働災害トラブルが起きないようにするためにも、日常的に、弁護士に労働条件を相談することによって、法的枠組みを踏まえて労働条件を整備することができ、労働災害トラブルが顕在化するリスクを軽減できます。
特に、労働人口・生産年齢人口の減少、ダイバーシティマネジメントが求められる現代社会において、人材の採用や定着が企業の業種や規模にかかわらず、課題となっています。
労務・人事トラブルに精通する弁護士に依頼することによって、従業員の方々にとっても安心して、働きやすい環境をつくり、より本質的な業務に専念し、生産性を向上できます。
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労災トラブルについて、企業が弁護士に依頼する必要性やメリットについて解説します。
弁護士による会社側の労働災害対応のサービス内容
1 従業員等による請求根拠に対する法的検討及び法的精査
従業員等から労災対応に起因する損害賠償等が請求されたとしても、その請求が法的に正しいとは限りません。
実際、従業員等から法的根拠なく請求されるケースがよくあります。これは、①従業員等が感情的になって嫌がらせのように請求してくるケースや②法的知識が十分ではないため、誤った又は自分に都合のいい解釈に基づいて請求してくるケースがあるからです。
そのため、法律の専門家である弁護士が従業員の請求根拠を法的な観点から緻密に精査することによって、従業員等による請求を拒否できたり、減額できたりする可能性があります。もちろん、根拠や理由のない請求には毅然とした対応で解決できます。
2 労働トラブル対応や労働基準監督署対応へのアドバイス・サポート
労働災害トラブルや労働基準監督署への対応は、日常的に発生するものではなく、ある日突然、不意打ち的に発生するもので、経営者や人事担当者の皆様にとって精神的な負担が大きいとともに、迅速な判断が迫られます。
このようなケースでは、労働法に精通している法律の専門家である弁護士に相談することによって、精神的・物理的な負担を軽減できるとともに、緊急の判断が迫られる場合でも適切な判断が可能となります。
労働災害対応では、初期対応がとても重要であるため、是非、重大なリスク・不利益を回避するためにも、お早めにご相談ください。
3 従業員等との代理交渉
従業員等から労働災害に起因する損害賠償等が請求されたとき、経営者や人事担当者の皆様が従業員等と交渉することは精神的・物理的な負担が大きく、従業員等との関係から冷静に対応できないこともあります。また、従業員等が弁護士に依頼し、従業員側弁護士が交渉を求めてくることがあります。
このような場合、経営者や人事担当者の皆様が直接交渉を行うことは、得策ではない場合もあり、法律やトラブル・紛争の解決の専門家である弁護士に代理交渉を依頼する方がメリットが大きいといえます。
弁護士に代理交渉を依頼することによって、経営者や担当者の皆様の負担軽減につながるとともに、適切なタイミング・方法で解決することも可能となります。また、企業の主張・考えを法的枠組みで整理することによって、企業側の主張をより説得的に伝えることができます。
自社だけで解決できないと判断したときは、労働災害トラブルについて、弁護士に代理交渉の依頼をご検討ください。
4 労働裁判対応
労働裁判では、裁判所が労働法や裁判例に従い判断するため、法的視点から、主張や証拠を準備して、適切なタイミングで提出する必要があります。この業務は、会社担当者のみで対応することが困難であるとともに、裁判業務に精通している弁護士が対応することが最も適切といえます。
労働裁判では、初期対応が重要で、より有利な結論を導くためにも、裁判対応が必要となるときは、できる限り、早期にご相談ください。
5 労働組合や団体交渉への対応
労働組合・団体交渉への対応についても、弁護士に依頼し、対応アドバイスや交渉の同席・窓口を依頼することができます。労働組合・団体交渉対応は、日常的に発生するものではなく、ある日突然、発生してしまうため、経営者や人事担当者の皆様にとって精神的な負担が大きく、また、経験が少ないため、適切に判断しづらい業務ともいえます。
そのため、労働法やトラブル・紛争の解決の専門家である弁護士に依頼し、対応策を一緒に検討するとともに、団体交渉に同席してもらうことによって、その負担を軽減し、最善の解決を目指すことができます。
労働組合対応は、経営者の皆様にとって、精神的・物理的負担が大きく、孤独を感じることもあり、また、長期化することもあるため、弁護士に依頼することで、その負担を軽減し、経営者の皆様がより本質的な経営・業務に専念することが可能です。
6 労働災害の予防に向けた研修・セミナー対応
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに起因する労働災害について、そのような問題行動を行ってしまった社員の中には、問題点を十分に理解できていない社員や知らなかった社員もいます。
そのため、問題行動を事前に予防するため、また、再発を防止するためには、コンプライアンス研修やハラスメント研修が有効な手段となります。
これらの研修は、CSR(企業の社会的責任)活動の一環ともいえ、コンプライアンスが強く求められる現代社会において、多くの企業が取り組んでいますし、その取り組みを社内外にアピールすることで、企業イメージを向上できます。コンプライアンス研修やハラスメント研修は、弁護士に依頼できますので、是非、ご相談ください。
企業側の労働災害対応については、弁護士法人かける法律事務所にご相談ください
弁護士法人かける法律事務所では、顧問契約(企業法務)について、常時ご依頼を承っております。企業法務に精通した弁護士が、迅速かつ的確にトラブルの解決を実現します。お悩みの経営者の方は、まずは法律相談にお越しください。貴社のお悩みをお聞きし、必要なサービスをご提供いたします。
顧問契約では 問題社員(モンスター社員)対応、未払い賃金対応、懲戒処分対応、ハラスメント対応、団体交渉・労働組合対応、労働紛争対応(解雇・雇止め、残業代、ハラスメント等)、労働審判・労働裁判対応、雇用契約書・就業規則対応、知財労務・情報漏洩、等の労働問題対応を行います。
費用
1 従業員・従業員代理人(弁護士)との窓口対応・交渉 | ①着手金 330,000円~ ②出張日当 55,000円/回 ③報酬金 経済的利益の10%(税別) |
2 民事訴訟の代理対応 | ①着手金 550,000円~ ②出廷日当 55,000円/回 ③報酬金 経済的利益の10%(税別) |
3 労働組合や団体交渉への対応 | ①着手金 330,000円~ ②出張日当 55,000円/回 ③報酬金 経済的利益の10%(税別) |
4 継続的な相談・サポート | 顧問契約・ライトプラン(5.5万円/月)、スタンダードプラン(11万円/月)、プレミアム(15万円/月)から選択できます。 |
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Last Updated on 2024年8月17日 by この記事の執筆者 代表弁護士 細井 大輔
この記事の監修者 弁護士法人かける法律事務所 弁護士法人かける法律事務所では、経営者の皆様に寄り添い、「できない理由」ではなく、「どうすれば、できるのか」という視点から、日々挑戦し、具体的かつ実践的な解決プランを提案することで、お客様から選ばれるリーガルサービスを提供し、お客様の持続可能な成長に向けて貢献します。 |